人質の朗読会 (中公文庫 お 51-6)

著者 :
  • 中央公論新社 (2014年2月22日発売)
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introduction───
そのニュースは地球の裏側にある、一度聞いただけではとても発音できそうにない込み入った名前の村からもたらされた。
現地時間午後四時半頃、W旅行社が企画したツアーの参加者七人、及び添乗員と現地人運転手、計九人の乗ったマイクロバスが遺跡観光を終えて首都へ向かう帰路、反政府ゲリラの襲撃を受け、運転手を除く八人がバスごと拉致された。
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この人の言葉の選び方、文章の組み立て方はいつも本当に繊細で、他の誰にも真似のできない静謐さに満ちていて、安定した精神状態でなければとても読むことができないと思う。

絶望ではなく、今日を生きるための物語。
いつになったら解放されるのかという未来じゃない。自分の中にしまわれている過去、未来がどうあろうと決して損なわれない過去だ。

先の見えない状況下で紡がれるからなのか、どの物語にも常に死の影が潜んでいる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 借読
感想投稿日 : 2015年5月20日
読了日 : 2015年5月19日
本棚登録日 : 2015年5月10日

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