女の頭ん中そのまんま文学にした、女性性をそのまま文章にした、川上未映子の小説は分かりやすく女で溢れている。考えに脈絡なんてない、そう感じるんだという”感じ"。これは"感じ"の文学だ。
主人公の姉・巻子は豊胸手術のために大阪から東京へやって来て、巻子の娘の緑子は何故だか母親と直接話そうとせずノートとペンで筆談をしている。そんな2人を見つめた主人公の3日間の物語。
豊胸手術に巻子は何故ここまで執着しているのか、緑子は何故喋らないのか、なんとなくその感じ、分からないけど突き進んでしまう感じ、分かる。分からないことについて彼女たちはとにかく喋る、書く。巻子は豊胸について妹に一方的に喋り緑子は自分の未知なカラダについてノートに書く。誰ひとり雄弁に語る者はいない。まとまりのない、とりとめのない、同じところを行ったり来たり、その感じ、分かる。
この話には男がいない。私にはなんだかそれが心地よかった。豊胸について考えるにもカラダについて考えるにも、男を出すと全部具体的になって”感じ"が消えてしまう。こういう胸がいいんだこういうカラダがいいんだ、彼らはカタチにこだわる。時に私たちを美しくしてくれるそういう具体性は、時に厄介で苦しい。分からない。ねえほんとうのことを。ようやく喋った緑子は卵を叩きつけて言う。みんな最初はこの卵だ。こんなに悩まなきゃいけないのは卵のせいだ。どれだけ割ったって卵はまだまだ私たちの腹の中にいる。卵が先か鶏が先かなんて言うけれど、人間も一緒だ。女は円環であってどこかでばっさり割り切れるもんじゃないしそれでいい。卵、思春期、凹む胸。ヒトの女の、この長い長い歴史の矛盾と諦め、そんなものを3日間の物語が発散しているように感じた。
- 感想投稿日 : 2017年12月8日
- 読了日 : 2017年12月7日
- 本棚登録日 : 2017年12月7日
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