1973年のピンボール (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2004年11月15日発売)
3.35
  • (19)
  • (31)
  • (51)
  • (21)
  • (2)
本棚登録 : 796
感想 : 48
4

「風の歌を聴け」に比べて、ぐっと複雑になっている。
2023年の「街と、その不確かな壁」を読み終えてから、この初期作品を読み返したら、初読時とは全く異なる感想を持った。
軽妙な文体や差し挟まれるユーモアによって、一貫して垢抜けた印象の作品だが、直子の登場とその死、その後の「僕」と「鼠」の心のありようが記された作品であって、最終盤にかけて話は深刻さを増していく。

直子の死と、断片的なエピソード。
ピンボール台とは、何なのか。
鼠は何をそんなに気に病んでいるのか。

処女作にも同種の暗さ、不穏さ、不吉さが織り込まれていたように思うが、この作品ではより色濃い。
エピローグになって、「僕」に関しては憑き物が落ちたかのような回復が描かれていて、読後感は悪くなく、むしろさわやかだと思った。

 今作での「双子」「配電盤」「貯水池」「ピンボール」が、以降の長編ではより複雑な姿をとっていくことになる(なったのだろう)。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年8月11日
読了日 : 2022年8月10日
本棚登録日 : 2022年8月10日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする