乳と卵 (文春文庫 か 51-1)

著者 :
  • 文藝春秋 (2010年9月3日発売)
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感想 : 864
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川上未映子さんの文章には独特の説得力があると思う。
それは小説にもエッセイにも言えることなのだけど、小説の方がより生々しい気がする。
簡潔な文章ではないし、意味やら意図を説明出来る程に理解しているかと言われれば答えはNOなのだけど、探るように重ねられる言葉から伝わるニュアンスが妙にリアルに感じられる。
そして、その言葉に「本当のこと」が隠されているような気がして仕方ない。
あぁ、そうだ、これなのだ。と思わせる力がある。
これって何だ?と聞かれても答えられないけれど、読んでいる瞬間は確かに「本当のこと」に触れている感覚がある。

物語の終わりに
「ほんまのことなんてな、ないこともあるねんで、何もないこともあるねんで。」
という言葉が出てくる。
そうだね。とも、違うとも言えない。
でもこの場面では、この言葉を言った人と向けられた相手の間ではこれが「本当のこと」だと思った。
「ないこともある」という表現がリアルだと思う。正しいと思う。すごいと思う。
そんな言葉や行動がたくさん出てくる。
共感よりも強い肯定。
分かるではなく、これが答えだと思わせる力。
でも掴んだと思った答えはふわりと空気に溶けてしまう。
明確な言葉ではないから。
触覚に近い感覚だから何度も追体験してやっと定着するのかもしれない。
また読みたい。

「あなたたちの恋愛は瀕死」の方は、ティッシュやチラシを配る仕事について改めて考えさせられた。(本題とは違うかもしれないけれど)
でも「乳と卵」ほどの感動はなかったのでちょっと残念。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2014年11月15日
読了日 : 2014年11月15日
本棚登録日 : 2014年11月15日

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