ダークゾーン (ノン・ノベル 898)

著者 :
  • 祥伝社 (2012年8月31日発売)
3.37
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本棚登録 : 281
感想 : 27
4

冒頭の数ページでは『クリムゾンの迷宮』と設定が同じに見え、ネタ切れかと失礼な感想を持った。読了すると、実際は根本的に違うことも、主に据えてあるのは盤上の駆け引きと人間のどうしようもなく暗い部分なのだと分かる。特に平易な言葉ばかり使うわけでもないのに、将棋や囲碁に詳しくなくとも分かるよう描写されているのがすごい。最後まで一気に楽しめる。

主人公の塚田に共感できない(または共感してはいけない)部分が残念。誰だって内側の暗黒面は見たくないのに塚田を通して見てしまうので。後書きを見るにその暗黒面こそテーマというから言ってもしょうがないことだけれど……
ただ露悪的ではない。勝負師の世界でギリギリを生きた男の遣る瀬無さや、人の心が耐えられない程の喪失感を、本筋の傍ら断章として丁寧に綴ってある。散りばめられた謎や塚田の引っ掛かりが、本筋と断章を読み進めるにつれて解けていくのはある種の快感。
ノン・ノベルの扉挿画も良かった。多くのヒントを元に創作された特徴的なキャラクターを生き生きと、想像の余地を残しつつ描いてある。ギリシャ神話やらヨーロッパの民間信仰やら様々なところから拝借された名称も個人的にはグッときた。塚田は「ネーミングのセンスには付いていけなかった」と言うが。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本棚
感想投稿日 : 2018年9月23日
読了日 : 2018年9月18日
本棚登録日 : 2018年9月23日

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