カストラチュラ

著者 :
  • 青林工藝舎 (2000年8月1日発売)
4.01
  • (66)
  • (36)
  • (65)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 326
感想 : 33

自分が読んだのは 1995 年刊行の作品社の本で、装幀も異なるが、内容は同じだろうと思うのでこちらで。毒を毒のまま美しいものとして受容して読めたのは、若かった頃の特権だったのだろうなと、いま読み返してつくづく思った。当時の自分ではなく、今の自分が今の自分の知識や倫理観、感性でもって読むと、その毒の部分がより強く前面に出てきて、圧倒された。そういう意味では、当時よりも今のほうが、琴線を揺さぶる部分は大きかったかもしれない。肉を食うということ、肉を削るということ、行動の自由ということ、行動の制限ということ、その結果の表現ということ、そういうことが全部、当時よりもずっと、辛辣で切迫したものとして訴えかけてきたように感じた。正しいものとして教え込まされる倫理というのは、立ち位置が変われば異なる。わたしたちは足掻きながら、自身にとってのそれをつかんでいくのだろうけれども、それをそのまま受容できるものだと信じられるのはなぜなのか。当時はすでに過ぎ去った時代の話として読んでしまっていたのだけど、今現在の自分にとっても、まったく遠い話ではないと思えるのは、この話に現在を刺すだけの力があるからだろうと思う。あらためて、すごかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画
感想投稿日 : 2023年10月21日
読了日 : 2023年10月21日
本棚登録日 : 2023年10月21日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする