最初から、アンニュイで薄幸な雰囲気を漂わせているこの小説は、雨の音と胸に落ちる涙の音が、最後のページまで、ずっと耳の奥に静かに続いているそんな小説でした。20代最後の誕生日を前に、無機質に生きてきた主人公が、赤い傘の女性と時空が交わり、生活が一変するのだけれど・・。
こんな女性が、コロナ禍のなか、居るのかもしれないと複雑に感じつつも、小説全体は、言葉の紡ぎ方が抒情的で、品の良い映画を見たような読了感。
夕べ、NHKでユーミン特集があって、守ってあげたい♪を熱唱していたっけ。
・・・誰もが、夢を持ち続け、はつらつと生きていられるとしたら、それは、どうであれ、周囲の誰かに守られているということ。
この小説の終わりに、そんなことが、そっと添えられている。
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- 感想投稿日 : 2021年1月16日
- 本棚登録日 : 2021年1月16日
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