森博嗣の文章は硬い。格式張って堅苦しい、という意味ではなく、むしろ文体は柔らかいし、使われている言葉もわかりやすいのだが、いかに誤読させまいかという気持ちが文章に現れているため、イチゲンさんお断りというような構えた文で、書き出しからしばらくは読者を受け付けてくれない。
それはそうと、本作は失踪した友人を探しに、友人の行きつけの謎の店に出向き、一夜(一章)に一人、名もない知らない女性と食事をする。食事をするだけである。ある意味ファンタジーかホラーなのかもしれない。
各章の最初の数ページは、最近の起こったことや様々な現象についての考察だし、半数ほどの章では、女性との会話も社会についての考察であり、小説という形態をとった、評論でもあり哲学書なのであろう。
だからといって、全く堅苦しい話はないし、最初の章ではそれらを一切表さずに、舞台の蓋然性を説明するため、自ずと読者は引き込まれていく。
小説という形をとってはいるが、作家森博嗣の頭のなかのアイデアを芋づる式に引っ張りだして、詰め込んだという話だ。
小説が嫌いな人にもおすすめしたい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
実験小説
- 感想投稿日 : 2015年4月4日
- 読了日 : 2015年4月3日
- 本棚登録日 : 2015年4月3日
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