人は生きていくうちに何かを失くしたり何かが欠けてしまうことがある。そんな時に、そっと耳元でそれが人なんですよ、それでいいのですと囁く声がする。
人と違う自分を受け入れられず苦しむことになるかもしれない。けれど、この世に一人しか存在しないあなた、そのあなたが私はいいのですと肯定してくれる声が聞こえる。
それが私にとっては小川洋子さんの物語だ。この「博士の愛した数式」は特に強くそう思える作品だった。
80分の記憶しかもたない博士と、家政婦の私、私の息子ルート。3人の過ごした日々はお互いをいたわりあいながら、歓びや驚きに満ち溢れた日々だった。過去から前に進むことが出来ない、記憶力を失くした博士。けれど、失くすことの出来ない博士の数学への崇高な愛に触れた私とルートは、博士の欠くことの出来ない本質に惹かれていったのだろう。
失くすことは悲しい。それでも、それがあなたの全てじゃない。あなたがいてくれてよかった。
あなたがいるから、私がいるのですよ。
私にも伝えたい人がいる。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本文学:著者あ行
- 感想投稿日 : 2019年12月7日
- 読了日 : 2019年12月7日
- 本棚登録日 : 2019年12月7日
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コメント 2件
mayutochibu9さんのコメント
2019/12/07
地球っこさんのコメント
2019/12/07