博士の愛した数式 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2005年11月26日発売)
3.89
  • (4183)
  • (4717)
  • (4608)
  • (415)
  • (85)
本棚登録 : 41251
感想 : 3781
5

人は生きていくうちに何かを失くしたり何かが欠けてしまうことがある。そんな時に、そっと耳元でそれが人なんですよ、それでいいのですと囁く声がする。
人と違う自分を受け入れられず苦しむことになるかもしれない。けれど、この世に一人しか存在しないあなた、そのあなたが私はいいのですと肯定してくれる声が聞こえる。
それが私にとっては小川洋子さんの物語だ。この「博士の愛した数式」は特に強くそう思える作品だった。

80分の記憶しかもたない博士と、家政婦の私、私の息子ルート。3人の過ごした日々はお互いをいたわりあいながら、歓びや驚きに満ち溢れた日々だった。過去から前に進むことが出来ない、記憶力を失くした博士。けれど、失くすことの出来ない博士の数学への崇高な愛に触れた私とルートは、博士の欠くことの出来ない本質に惹かれていったのだろう。

失くすことは悲しい。それでも、それがあなたの全てじゃない。あなたがいてくれてよかった。
あなたがいるから、私がいるのですよ。
私にも伝えたい人がいる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文学:著者あ行
感想投稿日 : 2019年12月7日
読了日 : 2019年12月7日
本棚登録日 : 2019年12月7日

みんなの感想をみる

コメント 2件

mayutochibu9さんのコメント
2019/12/07

私はこの本を読んで心が温まりました。
昨今、シングルマザーが多い時代ですが、博士の影響を受け、立派な大人になったのがとても感動をしたところです。
私も子供たちにどれだけいい影響を与えられるか、日々、考えております

地球っこさんのコメント
2019/12/07

mayutochibu9さん、こんばんは。
コメントありがとうございます♪
そうですね、私もとても心が温まりました。
子どもというのは、大人が思う以上にいろいろ考えてますよね。
ルートが「私」が博士を信じていなかったと涙を流して怒る場面がありましたが、それは自分が博士を守れなかったと自分自身に対する怒りでもあったと思います。
私はそこに博士と過ごすうちに成長したルートの姿を見ました。
きっと「私」もルートの怒りの意味を判っていた思います。
「子どもたちにどれだけいい影響を与えられるか」
mayutochibu9さんのお言葉に、身の引き締まる思いがいたしました。
ありがとうございました(*^-^*)


ツイートする