ティファニーで朝食を (新潮文庫)

  • 新潮社 (2008年11月27日発売)
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夜更けに僕の部屋の窓をこんこんと叩く音。酒癖の悪い男からこっそりと逃げてきたと、非常階段から部屋に足を踏み入れたホリー。部屋にいちゃもんをつける彼女に、僕は「何でも慣れちゃうものだから」と答える。(でも僕はこの部屋をそれなりに誇りに思っていたから、心中穏やかではない)そんな僕に彼女は言い放つ。
「私は違うな。何でも慣れたりはしない。そんなのって、死んだも同然じゃない」
最初に出会ったこの言葉によって、わたしのなかでホリーという女性像が形作られました。
ホリーは天真爛漫でコケティッシュで、誰もが彼女に振り回されて、誰もが彼女に振り回されたくなる……男性にとっては魅力溢れる女性。でも彼女の魅力はそれだけではなくて。ホリーにはホリーの美学みたいなものがあるんだと感じました。彼女のやることなすこと世間一般からは受け入れられないことがほとんど。でも、ホリーにとってはそんな批判やバッシングは痛くも痒くもなくて。自分の信じたことを凛とやってのける気概があります。彼女だけの哲学みたいなものが一本筋を通しているんじゃないでしょうか。
とある事情から、国外へ逃亡することになったホリーは、一緒に暮らしていた猫を町へ放ちます。
けれども、そのすぐ後に「何かを捨てちまってから、それが自分にとってなくてはならないものだったとわかるんだ」と後悔し、更にこれから先への不安に身震いします。いつも強くて美しい彼女が僕へ見せた弱気な部分。この小さな綻びが何故だかわたしには、ホリーが可愛らしくてたまらなくなりました。それでも彼女は旅立ちます。それでこそホリー。
読んでいるときは、ホリーに対して同じ女性という立場から、嫉妬してしまうようなジリジリとしちゃう気持ちにもなったけれど、読み終わるともう一度ホリーに会いたくなりました。そんな魅力溢れる女性です。

「あのホリーってコ、どうしてんのかなぁ。散々迷惑かけられたし、それを悪いとは全然思ってないし、男にちやほやされてさぁ、意味分からんコやったよなぁ。でも、意外と良いコやったよね。性格もさっぱりしてるし、イヤな奴には堂々と意見言うし、おもろいコやった。元気にしてるやろうね。あのコやったら、どこでもしぶとく生きていけるやろ。そやけど、全然連絡もよこさんと、ホンマ常識ってやつがないねん。まぁあのコらしいけどな。もし顔見せにきたらみんなで飲みにでもいこー」地球っこより……って感じになりました 笑

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 英米文学
感想投稿日 : 2018年2月27日
読了日 : 2018年2月27日
本棚登録日 : 2018年2月27日

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