いつも通り、美味しい食べ物と丁寧な暮らしが描かれた小川糸さんの本。
偶然、物語同様に丁寧で素敵な小川さんの暮らしぶりを載せた雑誌を読んだので、妙に納得というか、物語の中の主人公が料理する事や季節の行事を大切に過ごす事などが、上っ面だけでなく小川さんが過ごす日常のエッセイのように感じた。
そんな清潔感があり、静謐な物語を読み進めながら、最後はどこに終着するのだろうと思っていた。
栞と春一郎さんとの関係は、側から見たら世間的には許されない「不倫」なのだろうから。
どんなに栞がその立場を理解して慎ましく行動していても、奥さんと子供側からしたら綺麗事では済まされない。
…とは常識的には思うけれど、私はなぜか肯定してしまった。現実にもいるんだろうな、なぜか真面目に惹かれ合ってしまう、離れたくても離れられない運命みたいな。
「本当に好き」な人とどのタイミングで出逢えるか教えてくれたらいいのにね。
ただ春一郎側からの気持ちは綴られていないので、本当のところはわからないよなーと意地悪な気持ちで読んでいた私もいた。(栞は彼からしたら都合良いよなと)
いつも誰かに尽くしているような栞。
父だったり、妹達だったり、好きな人だったり。
でも、それは着物という自分の好きな事を仕事にしていたり、好きな土地に生活しているからこそなのだと思う。
それらが成り立っていなければ、他の人に献身的にはなれないのかもしれない。
自分が好きな事を選択できているからこその行動かと考えると、案外わがままに生きているのかもしれない。
最後、大晦日に訪れた春一郎。
薬指の変化。ボストンバッグ。
幸せになれると思って良いのだろうか。
それが束の間だとしても、彼女は既に覚悟してるのだろうけれど。
※旅館の食事がめっちゃ食べたい!
- 感想投稿日 : 2023年8月2日
- 読了日 : 2023年8月2日
- 本棚登録日 : 2023年5月29日
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