学生との対話

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  • 新潮社 (2014年3月28日発売)
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どんな分野でも、まともに向き合っていると必ず通ることになる、文字通り避けては通れない場所がある。今いる環境に関わらず、歩みを継続していたら必ず通過する場所。真剣にゴールを目指した先人の誰もが、足跡を遺していった道。その道こそを古典と呼ぶのかもしれない。雑多なコンテンツは、古典に通じるヒントにすぎない。

 「問い」と「想像力」について。印象に残った表現を以下に引用する。
<質問するというのは難しいことです。本当にうまく質問することができたら、もう答えは要らないのですよ。僕は本当にそうだと思う。ベルグソンもそう言っていますね。僕ら人間の分際で、この難しい人生に向かって、答えを出すこと、解決を与えることはおそらくできない。ただ、正しく訊くことはできる。>

<だから諸君、正しく訊こうと、そう考えておくれよ。ただ質問すれば答えてくれるだろうなどと思ってはいけない。「どうしますか、今の、現代の混乱を?」なんて問われてもどう答えますか。質問がなっていないじゃないか。質問するというのは、自分で考えることだ。>

<想像力という言葉を、よく考えてください。想像力、イマジネーションというのは、空想力、ファンタジーとはまるで違う。でたらめなことを空想するのが空想力だね。だが、想像力には、必ず理性というものがありますよ。想像力の中には理性も感情も直感もみんな働いている。そういう充実した心の動きを想像力というのだ。>
p.143

<とにかく想像力を磨くんです。想像力というものは、さっきも言ったように、空想とは違うのだ。その違いさえ知れば、君は存分に想像力を働かせればいい。想像力は磨くこともできるのです。想像力だってピンからキリまであるから、努力次第ですよ。精神だって、肉体と同じで、鍛えなければ駄目です。使っていないと、発達などしません。想像力も自分で意識して磨いていけばどんどん発達するものです。>
p.144

 想像力を鍛えること、これを個人的な人生のテーマに設定していた。仕事から人間関係まで、あらゆる活動の根本にこの能力が関係し、とてつもない奥行きを持つことを薄々感じていたからだ。それをこうも見事に言葉にされてしまった。自分自身が感じていたことのはずなのに、そんな自分よりもクリアに言葉にしている人がいる。もっと言葉を鍛えていかないと、自分という存在が消えてしまうぞ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年8月15日
読了日 : 2022年8月23日
本棚登録日 : 2022年8月15日

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