1Q84 BOOK 2

著者 :
  • 新潮社 (2009年5月29日発売)
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4

読後感は 「尻切れトンボ」の感じか、「残尿感」がある。
最後まで きちんとしっこさせてくれよーと思った。
パソコンの画面がフリーズして「強制終了」させたような感じだ。

この物語は 「月」がテーマとなっている。
ニンゲンの世界はどんどん変化しているが 
月が400年前も 100年前も 同じのままだというテーゼ。
それを 黄色い月と 少しいびつな緑色の月が 二つ。
同じ大きさでないというのが ミソで、
それは 青豆のオッパイが 左右同じでないというのに通じる。
ムラカミハルキの連想のなかでは 
月とオッパイが つながっているようだ。

ムラカミハルキの小説は 親父っぽい目で女子を見る。
ときおりロリコン風で そのようなスケベの目が
随所にあるのは おじさん読者として 楽しい部分である。

「今ここにあること」 
「今ここになくて もう一つの世界にある」こと
その区別が 月が二つあるということで表現し、
その月を見ている 青豆と天吾の 二人の1984年を描く。
10歳のときの 青豆から 手を握られた「感触」から
「かけがえのないもの」が 二人の中に生まれる。

二人は 現実に立ち向かいながらも 「逃避」すると言う性格が
共通している。
ムラカミハルキの中にある「逃避」のテーマは続いている。

確かに 父親が 堂々と登場するが、
相変わらず ムラカミハルキは 父親問題を 避けた。
自分の本当の父親でないということで 天吾は安堵するのである。
育ててくれた 父親の感謝と 
本来なら発生する 父親へのわだかまりを 避けてしまった。
ムラカミハルキは 多分最後まで 
しょぼくれた父親に対峙できないのだろう。

日本人の心の歴史として 何故オウム真理教事件が起こったのか?
というのが ムラカミハルキの 大きな問題意識のひとつであるが、
そこでは アイスピックで つつくような 作業をしているだけで
総体として つかみえていない ような気がする。
リーダーと青豆の会話は 意味が深いが 青豆の個人的なレベルに
矮小化されて、教義のない 宗教 が 天の声を聞く
ということで成り立っている。
そして その宗教の大きな資金源がどこにあるのか?
というところまで・・・明らかにできていない。

孤独 というものをうけとめること、
その重みだけは ひしひしと伝わってくる。

二つの月が あることを微細に語ろうとするが
カクメイ と ピース がどうやって違い
ムラカミハルキはいう
『カクメイはいくぶん尖ったかたちをした考え方であり、
ピースはいくぶん丸いかたちをした考え方だ・・・』
(ふーむ。それだけで 片付けちゃうのかな。)
ピースが 何故宗教になってしまったのか?
ということは 謎として 読み手に投げかけられている。

『青豆を見つけよう、と天吾はあらためてこころを定めた。
何があろうと、そこがどのような世界であろうと、
彼女がたとえ誰であろうと。』

でおわる が なぜ 青豆 を見つけようとするのか?
愛のためなのか?青豆のためなのか?自分のためなのか?

というより 何故物語の中で 青豆を見つけることができないのか?
青豆を 物語の中で 見つけたら、三文小説になる
という 考えが あるのかもしれないが、
ふーむ。
ムラカミハルキらしい 1Q84 だった。

多くの疑問文があるが 答えは少ない。
そしてムラカミハルキはいう
『説明しなくてはそれがわからないというのは、
どれだけ説明してもわからんということだ。』

いいな。このムラカミハルキの開き直り、
読者に 謎かけ して・・・よくわからないのは 読者のせいだ。
しかし、実は 書いている本人も よくわからんのだ。
説明できるわけねぇだろ・・・ということかな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 青春/恋愛
感想投稿日 : 2013年2月28日
読了日 : 2013年2月28日
本棚登録日 : 2013年2月28日

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