漂泊の楽人 (徳間文庫 う 1-18)

著者 :
  • 徳間書店 (1996年6月1日発売)
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感想 : 6
4

予想外の読み応えがあった。
物語の構想力が優れていた。
漆原肇子への不釣り合いな結婚の申し入れ。
相手は 中部銀行の取締役、沼津支店長の息子。
しかも東大卒である。
母親と兄と肇子の3人暮らしで、兄は失業中。
肇子も花嫁修業中。父親の遺産で生活している。
そんな不可思議なうちに 兄が 夜釣りに行き 
海岸に死体として流れ着く。
警察は 事故死か自殺と推定する。

兄は 死んだ時には 浅見光彦に ワープロを渡すように
そして 兄のフルネームを 入力しろと言う。
浅見光彦は、兄と大学の同級生で、
ぬれぎぬを晴らしたことがあった。
肇子は、浅見光彦を訪問して、浅見光彦の探偵が始まる。

実に、自由な発想と想像力で事件の解決を図る。
兄は 保全投資協会で働いていたことがわかる。
保全投資協会は、投資サギ集団だった。
巨額の投資をさせて、解散したのだった。
そのお金を 管理して 隠匿したのが 兄だったのだ。

沼津から 新潟県月潟村につながる過去が明らかにされる。
母親も、殺されて、母親のお悔やみの手紙が
月潟から来ることで、肇子も 月潟に行き
越後獅子舞の発祥の地であることをしり
母親のダイイングメッセージを ひもといていく。
兄のダイイングメッセージも重要な鍵を握っていた。

獅子舞、お瞽女、新潟の貧しい生活からうまれたものたちの
強い結束が 事件を事件たらしめた。
結束とうらぎり、そこで 殺人犯が 
浮かび上がって来るのだった。
浅見光彦の仮説的推理が、事件をひもといていく。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー/ハードボイルド
感想投稿日 : 2017年4月5日
読了日 : 2017年4月5日
本棚登録日 : 2017年4月5日

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