とある理由からとある組織に「あのバス」で連れ去られてしまうことになった星野。彼は連れ去られる前に付き合っていた5人の女性に別れを告げるために、組織からやって来た謎の大女・繭美と女性たちの元に行くのだった。
クールでかっこいい装丁から、そういう話だと思って読み始めたらスラップスティックコメディでした。5股を掛けていた男が、この人と結婚することになったから別れてくれと告げる物語なのですが、その「この人」が暴力と暴言の固まりのような大女なのですから。しかし話の展開は実に伊坂幸太郎的なのですね。細かいセリフのひとつひとつにまで物語上の意味を持たせてしまう。その展開の小気味よさを味わえます。それでいて大きな謎は放ったらかしというのもいいです。
また星野と繭美という人物造形が面白いのですね。先の計算をせず、その時の思いのまま動くため二進も三進も行かなくなる星野。初めはどうしようもない男というイメージを持ちますが、読み進めていく内に「悪い人じゃあないんだけどねえ」「いや、いい人ではあるんだけどねえ」と印象が変わります。さすがは5股ができる男。そして作中で怪獣的な扱いをされる繭美に至っても、読み進める内にちょっと好意を抱いてしまうんです。これは星野の目から繭美を見ているからでしょうか。そしてその好意を抱く原因は、星野自身の人の好さに由来するのかも知れませんが。
で、あちこちで書かれていましたが、僕も繭美はマツコ・デラックスしか脳内に描けませんでした。それしかないでしょ。うん。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2014年12月13日
- 読了日 : 2014年12月13日
- 本棚登録日 : 2014年8月5日
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