衝撃的。リアルで凄まじく怖い。1970年当時の星新一さんの着眼点、2020年からしたら、予言者の域。
スマホのメモ機能、オンライン授業、おすすめ機能を持つネット通販にアレクサ、サブスク、SNSの友達の誕生日通知機能など、現代人にはお馴染みのツールやサービスを彷彿とさせるコンピューターの多機能化と、人間とコンピュータのどちらが主従かもはや分からないほどの依存がこれでもか描かれていて、身につまされる。
そして、利便性のためにデータとして保管・管理されるようになった個人情報の保護意識の高まりと、
情報資産としての高い価値化、
漏洩への不安、
だからこその、他者の秘密を覗き見る快楽や罪悪感といったものも余すことなく盛り込まれている。
星さん、タイムマシンで50年後の2020年に来てこっそり覗き見してから書いたんじゃなかろうか。
いや、もう、ほんとうに、すごい。
うん、すごい。
すごい。(興奮のせいで語彙力崩壊。)
この作品は、ショート・ショートの神様と言われた星さんにしては珍しく、12階建の某マンションを舞台に、12人の登場人物を用いて、12ヶ月の物語として描いた、12編からなる連作短編集。
第1、2章を読んで、3〜4ページで明確でハッとする結末をいくつも作り出してきた星さんにしては、うーん、なんかぼんやりしたまま終わったな…と思ったと思えば。
3、4、5章…と読み進めていくうちに、連続性や伏線が明らかになると同時に、描かれている人間の多様性、少なからず体験した覚えのある不安感や欲望、罪悪感などに引き込まれてしまう。
そして、迎えた結末はといえば…。
こんな未来、本当に来るかもしれない。
いや、もう始まっているのかも。
この、ネット社会を予知していたとしか思えない生々しさや驚きは、ネットがなかったゆえに近未来のSF作品として捉えていただろう1970年当時よりも、2020年を生きている現代の読者こそ味わえるものだと思います。
50年越しに今こそ読むべし、と思った名作。
- 感想投稿日 : 2020年11月13日
- 読了日 : 2020年11月13日
- 本棚登録日 : 2020年11月13日
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