九つの物語で成り立つ連作短編集に、幽霊の兄が作る九つの料理と、九つの純文学が登場します。
置かれた現状といびつな家族の形と忘れていた悲しい記憶にもがく女子大生の「ゆきな」の姿に不覚にも泣いてしまいました(そんな若い年齢でもないのに)。
でも、恐怖や悲しみや苦しみを抱えて時に誤った選択をしそうになりながらも、幸せな瞬間を噛み締めて季節の巡りとともに歩み続けたゆきなと、お兄ちゃんの大雑把で曖昧なくせに真理をついた人生哲学に救われました。
料理が美味しそうと話題の本でしたが、九つの料理とともに終焉に向かって過ぎ行く時間の中でゆきなの環境と心に寄り添った九つの純文学も併せて読みたくなりました。
そして、読み終わってみると、なぜこの物語のタイトルが「九つの物語」ではなく「九つの、物語」であるのかわかった気がしました。
あと、何故かわからないけど、この物語を読んで、菅原孝標女の「更科日記」を思い出しました。季節の移り変わりの描写や侘しさ、儚さの表現が見事だったからかもしれません。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2014年2月21日
- 読了日 : 2014年2月21日
- 本棚登録日 : 2014年2月20日
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