イラストレーターでエッセイストの南伸坊が、臨床心理学者の河合隼雄の個人授業を受けるというコンセプトの本です。
河合隼雄の語る心理学は、何か名人芸のようで茫漠とした印象があったのですが、本書では南伸坊が河合の講義を大胆に敷衍してみせることで、何が心理学でないかというリミットが浮き彫りになっているのが、おもしろく感じました。とくに、箱庭療法についての講義では、悩みの深いひとが作った箱庭に芸術的な「アイディア」を見ようとする南を河合が諌め、箱庭の表現に示された自己治癒への可能性を治療者との人間関係の中で見ていくことのたいせつさを語っているのが、印象的でした。
ただ、南のツッコミを入れるまでもなく河合自身が十分に柔らかいことばで一般読者に専門的な内容を届けることのできる語り手なので、専門家の話と一般人の受け止め方の落差を楽しむような読み方には向かないような気もします。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
心理学・精神医学
- 感想投稿日 : 2014年3月3日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2014年3月3日
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