マレー蘭印紀行 改版 (中公文庫 か 18-8)

著者 :
  • 中央公論新社 (2004年11月25日発売)
3.71
  • (25)
  • (21)
  • (35)
  • (8)
  • (0)
本棚登録 : 399
感想 : 42
3

自伝三部作にえがかれた旅の途中で著者が立ち寄った、東南アジアの国々の土地と文化およびそこに暮らす人びとのようすをえがいた旅行記です。

「跋」のなかで著者は、「旅行記の方法は、自然を中心とし、自然の描写のなかに人事を織込むようにした」と述べています。ゴム園や鉱山の現場についての取材も含んでいますが、紀行文というよりも、詩人である著者のまなざしを通して見られた土地の印象がつづられている作品といえるように思います。

東南アジアおよび南洋の旅行記は、これまで多くの日本人作家によって書かれていますが、本書もそのうちのひとつにかぞえ入れられる作品です。自伝三部作では、さまざまな土地をおとずれながらも、どん底からのまなざしによってとらえられた普遍的な「人間」が中心的なテーマとして浮かびあがっているように感じましたが、本作では詩的な表現によって現地の自然と文化が描写されており、いわゆる「南洋幻想」の一端をかいま見ることができます。そのことについて、現在の観点からどのような評価をくだすにせよ、興味深く読むことのできる作品であると思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本の小説・エッセイ
感想投稿日 : 2022年4月9日
読了日 : -
本棚登録日 : 2022年4月9日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする