『構造と力』(1983年、勁草書房)を刊行し、「ニュー・アカデミズム」の旗手として活躍していたころの著者のエッセイや対談などを収録している本です。
分量的に多くを占めているのが、ドゥルーズ=ガタリをめぐる今村仁司との対談と、現代におけるマルクスの思想の意義についての柄谷行人、岩井克人との鼎談です。ただし「あとがき」で著者自身が「いささかコントロール過剰とうつるかもしれない」と述べているように、チャート式のような図式的解釈によりかかっているような印象はいなめません。もっとも著者の出生作である『構造と力』同様、図式化することで思想の重々しさを乗り越え、ある種の疾走感を生み出すことが著者たちのねらいだとするならば、そうした意図はある程度実現されているのではないかという気がします。
80年代の現代思想の雰囲気に関心のある読者にとっては、心地よく読むことのできる本だと思います。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
哲学・思想
- 感想投稿日 : 2020年4月2日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2020年4月2日
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