BL草創期の立役者の一人である著者のエッセイを中心に、竹宮惠子や木原敏江などのマンガ家との対談、さらに「実践編」として短編小説「遊戯」を収録している本です。
古い本ですが、竹宮との対談のなかで、著者が「カップリングの思想」について語っており、すでにこのころからこうした基本的な構図が自覚されていたことがわかります。そうした歴史的な関心から読むと、興味深い点も多く発見できるのかもしれません。
ただし本書には、一般的な理論を構築しようとする意図は見られません。文庫化にさいして増補された「反少年派宣言★」というタイトルの文章でも、「個人事情」に左右されるということをはっきりと述べており、本書で論じられているのは、著者自身のきわめて私的な「美少年学」です。著者にとっての「美少年」は、「十七歳に一日もかけてはならんし……二十七まではギリセンで許してしまうのだ」と規定されており、「ぎりぎりで少年にしちゃうというところが好きなわけ」だと述べられています。こうした著者自身のこだわりについて、行きつ戻りつしながら考察をかさねていくというスタイルで議論がおこなわれているのですが、趣味の対象について語ることはその本人について語ることと無縁ではなく、けっきょく著者の「個人事情」に話は立ちもどることもすくなくありません。
そのほかでは、竹宮惠子の『風と木の詩』や、木原敏江の『摩利と新吾』について、作家自身が著者の問いかけにうながされつつ分析をおこなっている対談は、これらの作品を読んだことのある読者にはおもしろいのではないかと思います。
- 感想投稿日 : 2022年1月25日
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- 本棚登録日 : 2022年1月25日
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