小暮写眞館 (書き下ろし100冊)

著者 :
  • 講談社 (2010年5月14日発売)
3.86
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本棚登録 : 5177
感想 : 772
5

辞書並みに分厚いこの本の
長い長い物語を読み進めている間ずっと、
なぜ表紙が「小暮写真館」の写真ではなく
春景色の中を走る電車なのか、首を傾げていたのだけれど。。。

商店街の古い写真館にそのまま住もう!という酔狂な父のせいで
次々と不可思議な写真を持ち込まれ、
「心霊写真バスター」扱いされてしまう「花ちゃん」こと、英一。

でも、写真に写り込んだ「ありえないもの」は皆、幽霊ではなくて
もがきながら生きているひとの想いが投影されたものだった。

新興宗教に夫との仲を裂かれた女性。
仕事先の娘であった婚約者を何重もの不幸に追い込んで苦悩する男性。
絶対王政よろしく家族に君臨する父と盲従する母に苛立つ小学生。
母に絶望して「絶対零度女」という殻に自分を封じ込めた垣本順子。

そんな、写真の謎に導かれて邂逅したさまざまな人生に触れることで
幼くして病死した妹 風子の死の責任を
それぞれ心に抱えた両親、弟ピカ、英一自身の
「冷凍睡眠」させてきた想いが、ゆっくりと解凍されていく。

そして、英一という「駅」でひととき停車して
自分の中の壊れた部品を点検し、調整して発車していった垣本順子が
「あたしはとっくに走り出してる。」と送ってきた写真が
表紙の謎をすうっと解いてくれた瞬間の、爽やかな感動!

英一と彼女が、最後にインスタントカメラで撮り合った
現像しないままのお互いの写真。
そこに写っている相手の顔は、
シャッターを切ったふたりの想いを乗せて
きっと眩しく笑っている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ま行の作家
感想投稿日 : 2012年6月19日
読了日 : 2012年6月18日
本棚登録日 : 2012年6月19日

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コメント 6件

円軌道の外さんのコメント
2012/06/19


まろんさん、
沢山のコメントと
お気に入りポチ
ありがとうごさいました(^O^)

大雨の中、今朝
福岡から
帰って参りました(汗)


しかし、相変わらず
いいレビュー書きますよね〜☆

まだ読んだことのない小説なのに
なんか登場人物たちに親近感が湧いたり、
表紙の映像も
リアルに浮かんできて
かなり引き込まれました♪


元々、宮部みゆきさんは
家族の再生を描くのが上手い作家ですよね。

しかも若者や子供が主人公だと
俄然力を発揮する人だし(笑)、

写真がモチーフになってる設定も
個人的にツボなんで 、
読みたいリスト入り
決定です!!(笑)(*^o^*)


まろんさんは
本を読むスピードは
速いほうですか?


自分はかなり遅いので(汗)
辞書並みの厚さなら
おそらく1ヶ月は
確実にかかると思います(^_^;)


まろんさんのコメント
2012/06/19

円軌道の外さん、台風に追いかけられるように福岡から
大変だったでしょう。。。お疲れ様でした!

そうそう!
私も宮部さんは、人がどんどん死んでしまうような作品じゃなくて
少年や子どもが主人公で、
ほろっとするようなエピソードが重なっている作品のほうが好きなので
この本はとても心に響きました。

英一の友達のテンコとか橋口くんとかコゲパンちゃんとか
筋金入りの鉄ちゃんであるヒロシくんとか
円軌道の外さんが好きになってくれそうなキャラが
いっぱい出てきますよ~(*'-')フフ♪

本を読むスピードですか。。。

遅いほうではないとは思いますけれど、
次の生徒が来るまでの数分とか
シチューの灰汁をとりながらとか
姑息なまでに一日のありとあらゆる時間を駆使して読んでるので
きちんとお仕事してる皆さんには申し訳ないような(>_<)
普段のペースだと、1日1冊は読んでしまいます。
この『小暮図書館』は700ページ以上あったので
さすがに2日かかりました(笑)

雀宮さんのコメント
2012/06/21

この本、前半と後半で少し印象が違いました。
前半はなにかスピリチュアルな話を日常ミステリ的に書いてるのかなと、あまり話に入り込めなくて。
お母さんと風子ちゃんと光と英一。家族の話には引き込まれました。
不動産屋さんの彼女にも。
この本は、その後の彼らを想像したくなる余韻が素敵でした。

まろんさんのコメント
2012/06/21

雀宮さん、コメントありがとうございます♪

うんうん、確かに!
前半は、英一くんが、完全に心霊写真バスター化してましたものね(笑)
宮部みゆきさんは、「長編を書くぞー!」と思い立つと
ほんとにお話がものすご~く長くなる作家さんですよね!
文章も構成も上手いからこそ許される、暴挙ともいえる長さです(笑)

円軌道の外さんのコメント
2012/06/27


ええーっ!!!
やっぱ読むの早いんですね〜(汗)(◎o◎)

自分もまろんさんと同じく、
空き時間があれば
すべて本を読むのに充てたいくらい、
常に小説を持参して
信号待つ時間や
エスカレーターで上がる間にも
本読んでます(笑)


だけど読むんは
かなり遅いんスよね〜(>_<)

一回読んでも理解できなくて
また何ページか戻って
読み直したりしょっちゅうやし…


普通で
一歩進んで
二歩下がるくらいのペースかなぁ(笑)

まろんさんのコメント
2012/06/28

円軌道の外さん
そんな風に大切に丁寧に読んでもらえる本は、幸せだと思います!

娘のところに、一緒にRPGをやろうって遊びに来た男の子の中には
バトルだけに熱中して、ストーリー部分のログを
ほとんど読まずに飛ばしちゃう子がけっこういて
本じゃなくてゲームだけど、
でもお話をもっと大事にしてあげてよ~(ノ_・。)
と、思ったりしていました。

私は、生きてる間にあと何冊、本が読めるかなぁと思うと
ついついせっかちになってしまって。。。
もっと丁寧に1冊を味わわなくちゃですね!

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