累犯障害者

著者 :
  • 新潮社 (2006年9月14日発売)
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【きっかけ】
社会派ブロガーちきりんさんのVoicyで、軽度知的障害のある成人が、犯罪に巻き込まれやすいという事実について解説していた際に紹介されていて、気になっていた本。

【感想】
障害者が犯罪の加害者になることについて、なぜ起こるか、起こった後どんな経過をたどるのか、個別性はもちろんではあるが、社会の構造的な背景についても、日本で現実に起こっていることを述べている。著者自身が刑務所で服役を経験したと当事者でもあり、刑務所の内と外から見えることとその考察が非常に深い。
重苦しい内容といえばそうだが、文体が読みやすく、割とすぐに読めた。
刑務所では、障害の有無にかかわらず、同じ建物で過ごすらしい。障害の特性・程度も考慮されない。社会復帰にむけた更生をめざす施設であるはずが、療養・介護・社会的入院的な施設になっている現状がある。刑務所に入るときも出た後も、しかるべき福祉的な支援につながっていない現実がある。これについては、医療で病院から在宅に帰るときの「退院前カンファレンス」のように、「出所前カンファレンス」を設けたらよいのではないかと思うが、その人材もカネもつかない(社会の優先事項として扱われない)のだろう。刑務所が福祉の要素まで担うのは限界がある。警察・裁判所・司法・福祉がうまく連携できないものだろうか。
昔、聾学校では、口話主義の教育が行われ、卒業時に学力が身についていない、学校教育を受けてもなお「知的に低い」という人がうまれてしまっていた過去の事実にびっくりした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年6月5日
読了日 : 2023年6月3日
本棚登録日 : 2023年5月18日

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