夜を乗り越える(小学館よしもと新書)

著者 :
  • 小学館 (2016年6月1日発売)
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本棚登録 : 3237
感想 : 365
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なぜ、本を読むのか?
本を読む理由がわからない方、興味はあるけど読む気がしないという方の背中を全力で押したくて書いたという本書。
読んでいて胸が締め付けられるようでした。

私も又吉さん同様に、本に救われてきた人間です。
自意識を持て余してしまうとき、器用に生きられないとき、本はいつもそっとそばにあって、深い闇を追い払ってくれました。本は読まなくたっていい。けど、そんなに難しく考えることなく、まずは読んでみたらどうよ、と真摯に語り掛けてくれる気がしました。

読んでいて何よりも感じるのは本への愛情と作者への尊敬の念。本を楽しみたいという気持ちで、わくわくしながら本を開くのは私も又吉さんとまったく同じ。
悪意を持てば小説をつまらなくすることなんて容易だからこそ、マイナスな情報にばかり目を向けて本を楽しめなくなることは避けていきたい。

白か黒かではない、二択の間で迷っている状態を優柔不断だと言わないでほしい、と言うあたりに又吉さんの人柄が表れている気がします。
本は、世界が二択ではないということを教えてくれる貴重な存在ですよね。
それに、本はその時の自分の能力でしか読めない。「いつ読んでも違う味がする。それが読書の大きな魅力です」という言葉も大好きです。

長い人生、どうしても深い闇に落ちてしまって、この夜さえ越えることができたら…という日だってあるはず。ほんの少しの差異なんだろうけれど、そっと光の方へ自分んを押し出してくれるのも、本でした。
丁寧に紹介された本たちは、どれも読んでみたいし、読んだ後にまた又吉さんのコメントを読んでみたい。

又吉さんのどこまでも静かな空気感が心地いい1冊でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会・ビジネス
感想投稿日 : 2017年5月5日
読了日 : 2017年5月5日
本棚登録日 : 2017年5月5日

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