愛人の援助を受けセレブ気取りで暮らす32歳の千遥は、幼い頃から母の精神的虐待に痛めつけられてきた。
一方、中学生のとき父を亡くした27歳の亜沙子は、母と二人助け合って暮らしてきた。
千遥は公認会計士の試験に受かった年下の恋人と、亜沙子は母の薦めるおとなしい男と、結婚を決める。
けれどその結婚が、それぞれの“歪んだ”母娘関係を、さらに暴走させていく。
お名前はよくお見かけしますが、初めて読む作家さんでした。
母と娘の関係性に焦点を描いたこの作品、ものすごく、おもしろかったです。
そもそも、母と娘の関係って、ちょっと特殊ですよね。
母は娘を同一視しやすく、一方でライバル視しやすい。
そして娘にとっても母は幼少の頃から一番近く、承認を得たいと思う相手なのかもしれません。
互いに自立していたらこんな軋轢も生じないのかもしれないけど、良くも悪くも母親は無視できない存在だったり、距離の取り方が難しい。
特に毒親というわけでもなければ、過保護すぎるというわけでもない、普通の母親に育てられたと思っていましたが、読みながら思わず親との関係性を省みることになりました。
結婚とか、介護とか、親子の関係性が変わるきっかけってきっとあるんだろうし、当たり前かもしれないけど、いつまでも同じじゃないんだなぁと噛み締めながら読みました。
きっと子どもへの愛情を一瞬でも持ったことのない母親なんていないと信じたいけど、それでもすれ違いが生じるのは、どちらかに、あるいは互いに相手への甘えがあるからなんじゃないか、なんて風に思いながら本書を読み終えました。
- 感想投稿日 : 2016年4月29日
- 読了日 : 2016年4月28日
- 本棚登録日 : 2016年4月28日
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