青空の卵 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社 (2006年2月23日発売)
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感想 : 772
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ひきこもり探偵シリーズの第1作でもある坂木さんのデビュー作。
コンピューターのプログラマーをしている人間嫌いのひきこもり気味な人間鳥井真一と、そんな友人のために休みが多く比較的自由がきく外資系保険会社に就職した坂木司が織りなす日常ミステリーでした。

最初に思ったのは、主人公と著者の名前が同じだ!ということ。思わず道尾秀介さんを思い出しましたが、ミステリー小説ではままあることなんでしょうかね。

それはさておき、癒し系ミステリーと言ってもいいかもしれないというくらい、本書に流れる空気が優しくて、かなり情緒不安定で社会に適合できない鳥井の姿にはらはらしつつも、人の温かさに触れて安心したり、私自身癒されたりしました。

名探偵コナンは体が子どもで頭脳が大人ですが、鳥井は明晰な頭脳を持ちつつ子どもの心を一部残していて、それは純粋な心を残しているというよりも、条件が重なると言動が幼児化してしまうというような危ういもので、鳥井が持つ闇が深くていたたまれない。

ところで坂木さんの小説に登場する人たちは本当にみんないいキャラですね。
この作品がシリーズものなのが嬉しいです。まだまだずっと読んでいたい。本作は短編小説の連作ですが、一番好きなのは「春の子供」。複雑な生い立ちの鳥井ですが、この章では氷が溶ける様が垣間見れて、家族っていいなぁと思わされます。

恋人でもない家族でもない、不思議な関係の鳥井と坂木ですが、二人の友情がいつまでも形を変えながらでも続いていくといいなと願わずにはいられません。続編を読むのが楽しみ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本の小説
感想投稿日 : 2015年5月31日
読了日 : 2015年5月31日
本棚登録日 : 2015年5月31日

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