死んだ初恋の人の面影を別の女性に見出すが・・・・という、不朽のテーマにのっとった物語。
私はナボコフの「深読み無用」という言葉に従って素直にハンバートの目線で読みました。
ロリータがどんな容姿なのかひたすら想像し、その痛ましさ(おっさんが小娘に軽蔑される時の情けなさや肩身の狭い気持ち、ジェネレーションギャップのやりきれなさの書き方の見事なこと!)に凹み、ラストに山から小さな村を見降ろして、平和な人々の暮らしの声を聞きながら、自分がロリータをそうした平和で健全な世界にいられなくさせてしまったのだと自覚して絶望するくだりに涙を流したものでした。
でもそういう読み方って最近はあんまり歓迎されてないんですね。若島正の「ロリータ、ロリータ、ロリータ」などを読んで、ここまで深読みする人が多いのだと知って驚きました。
とりあえず私は素直に読み続けようと思います(笑)。「芸術(つまり好奇心、やさしさ、思いやり、恍惚)」というナボコフのあとがきにある一文を考えると、ハンバートは勝手ではあるけれど(ハンバートに心打たれる私でも、リタやシャーロットはやっぱり気の毒すぎると思いますし)、ロリータへの最終的な愛は詭弁と取るべきではなく、本当にこれからの彼女の幸せを願っている、と解釈できると思うし、したいです。
余談ですが、過去様々にこの本の装丁や表紙は変わっています。その中でも私が一番好きなのは、この文月信氏の表紙です。幻想的で感傷的なこの物語の雰囲気がよく出ていると思うのです。映画のスチールや扇情的な絵のものは・・・うーん。
- 感想投稿日 : 2009年1月28日
- 本棚登録日 : 2009年1月28日
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