ステノグラフィカ (幻冬舎ルチル文庫)

著者 :
  • 幻冬舎コミックス (2012年7月18日発売)
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本棚登録 : 417
感想 : 39
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国会速記者の碧(へき)の仕事は、耳をそばだて議員の発言を一字一句逃さずに書き留めること。自分の気配を消し、耳と目と手と頭だけを働かせる。
そんな碧が書き留めたいと思う声の持ち主がいる。
明光新聞社政治部記者の西口だ。
美声ではないけど、滑舌がよく、センテンスの区切りが明瞭。がさつな印象だが、不思議と下品ではない。後輩にも慕われ、よく下世話な話に興じている。最初に気になったのは声だけだけれど、次第にその人となりに興味を持つようになる。
ちょっとしたきっかけで言葉を交わすようになったふたり。
碧と同様に、西口の方でも
物静かで地味だけど、楚々とした碧に好奇心を抱いていた。
そのまっとう過ぎるほどまっとうで、何事もスルーしない性格。聞き上手で、情が深く、知らぬ間にスルッと入ってしまうような懐の深さ。
いつしか惹かれあうようになる。
このふたり、静と動というか、われ鍋にとじ蓋というか、お互いにないものを補えるようないい関係だと思う。18才もの年齢差を全然感じさせない。碧が老成してて…ww
西口は、碧が最初に思っていたよりも、ずっとナイーブでプライドが高くて、でも少し臆病で、ズルくて、大人って面倒くさいなって思う。
プライドとか矜持とかしがらみとか未練とか。色々あるんだなって。
大人だから、愛とか恋とかばっかり言ってられない。
でも、大人だって、やっぱり恋をするんだ。ただネズミ花火みたいにクルクル跳ね回れないだけで。
キラキラした高校生カップルみたいな、目がつぶれそうな眩しさはないけど、静かに胸をキュッと捕まれるような、そんな恋もいいかも。
一穂さん作品の中でも、これが大好きとは言わないけど、『Off you go』の空気を踏襲するような大人の難しさみたいのは悪くなかった。
でも、萌えとかトキメキとかキュンはなかった気もする。
ところどころ、小技はきかせていたのだと思うけど、攻も受も個人的にいまいちストライクゾーンじゃないので、心に響かなかったのかな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 年の差
感想投稿日 : 2012年8月2日
読了日 : 2012年8月2日
本棚登録日 : 2012年8月2日

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