空の拳

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2012年10月1日発売)
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本棚登録 : 610
感想 : 112
5

ボクシングなんて全く興味がない。テレビ中継だってほとんど見たことがない。角田さんの新作、ボクシングの話か・・・、気乗りしないけど角田さんだし一応押さえておこうかなとの思いで読み始めた。

物語はボクシング雑誌に配属になった編集者、空也の目線で描かれる。
不本意な配属先でやる気のない空也の態度にイライラ。ボクシング用語のわけわかんなさにまたもやイライラ。何だこの小説はと思いながらも我慢し読み続ける。

しかし、しかーし!!
中盤付近?いやもっと前か?
空也の通うジムのスター選手タイガー立花の一戦一戦を読み進めるうちに、自分も空也と一緒にボクシングの魅力に徐々に徐々に取りつかびれているのがわかる。
試合の描写も全くの素人から成長する空也とともにどんどんリアルに熱くなっていく。自分もリングサイドで観戦しているような錯覚に陥る。
「いけー、タイガー!!休んでんじゃねー」って叫びたくなった。

空也とタイガー立花のそれぞれの成長。それを取り巻く魅力的な人々。
鹿野編集長、萬羽トレーナー、中神の母、それぞれのキャラがまたいいんだな。

前半はあれほどうだうだ読んでたのに、後半はほぼ一気読み。
読み終わる頃にはいっぱしのボクシング通になった気分。
いや~、面白かった。興奮した。

そういえば、角田さんボクシングやってるんだよな。だからか。
満を持してってことだったのかな。
角田光代の引き出しの多さに脱帽。文句なし☆5つです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 角田光代
感想投稿日 : 2013年1月8日
読了日 : 2013年1月8日
本棚登録日 : 2013年1月8日

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コメント 2件

円軌道の外さんのコメント
2013/05/08


こんにちは!
いつもお気に入りポチやコメント
ありがとうございます(^O^)

角田さんの書く小説いいですよね。

自分自身プロボクサーなので
ボクシング雑誌で
角田さんがジムに通ってる話を知って
いつかボクシング小説を書いてくれるだろうと
密かに期待してました(笑)。

そしてここ最近
ブクログで知り合った皆さんが
この小説をオススメしてるのを読んで、
「おっ、出てたんや〜!」って
無性に気になってたんですよね(^_^;)


ボクシングをいまだに野蛮なスポーツだと思ってる人もいるかもやけど、
ボクサーはみんな、
相手を倒すためではなくて、
過去の自分に打ち克つために
リングに上がります。

すぐに諦めてしまう自分や
いつも逃げてばかりだった自分。

昨日の自分を越えるために
ツラい練習に耐えて、
同じ体重、同じハンディで
自分が今まで倒してきた選手たちの
思いを背負って戦う競技だと自分は思ってます。

だからリングでは
どんなことがあったって逃げないし、
そう簡単に投げだしたりできない。

人生そのものと
スゴく似てるような気もします。

言葉にするのは難しいけど、
人生も結果よりも
戦う姿勢や
抗う姿勢こそが大事なんやって、
自分は思うんですよね(^_^)

角田さんがボクシングを通じて
何を描きたかったのかを
自分も知りたいので
近々読んでみようと思います♪

ああ〜
けどドキドキするなぁ〜(笑)

vilureefさんのコメント
2013/05/09

円軌道の外さん、熱いコメントありがとうございます♪

「人生も結果よりも戦う姿勢や抗う姿勢こそが大事なんや」
うん、うん分かります。
この本を読むまでは理解しがたい感覚だったかもしれませんが、この本を読んだからには私もにわかボクシングファンです(笑)

プロボクシングなんて所詮作られた娯楽だろうなんて思っていた私は愚かものでした。
反省しきりです。

足が震えて逃げだしたくても立ち向かう、そのまっすぐな姿勢こそがボクシングそのものなんだって今だったら分かります。

これも角田さんがこの小説を書いてくれたからです。ありがたや~。

プロボクサー目線で読んだらどんな感想を持つのか、円軌道の外さんのレビューがとても楽しみです!!
お待ちしてますね(^_-)-☆

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