2023.11.2 読了 ☆9.2/10.0
伊坂幸太郎さんのデビュー作。
高校生の時に読み、その時は漠然と「喋るカカシが殺される話」としか読めなかったのが、大人になって再読してみると物語の面白さはもちろん、そもそもの設定の奇抜さに驚かされる。
鎖国のように外の世界から閉ざされた島「荻島」に仙台からやってきた主人公・伊藤。何故自分がこの島にいるのか、何故カカシが喋るのか、というところから物語が始まるのだ。
この設定を思いつき、単なるファンタジーで終わらせない手の込んだ要素も散りばめられてる。
未来のことが分かる喋るカカシ・優午
反対のことしか言わない元画家・園山
「島の掟として」殺人を許された、詩と自然を愛する男・桜
などなど、個性的なキャラクターが多数登場する。
物語は序盤からゆっくりと、伊藤が島民や未来がわかる案山子と出会い交流していくもの。
言葉を話すカカシの周りで色々な事件が起きて話題も尽きないが、読み進めるほど各キャラクターの想いが垣間見えて愛おしくなる。
それはまるで小説版:不思議の国のアリスみたいな雰囲気。
個人的には、遡ること何百年前の江戸時代、案山子が誕生する徳之助と禄二郎のストーリーに感動…
あと伊東の祖母・峯のあたたかな言葉も突き刺さり感動…
そして終盤、P.281のような同じ人間とは思えない城山との対峙の場面の桜、かっこいい!(よくぞやってくれた。)
そして何より、タイトルの「オーデュボン」というフランスの動物学者とリョコウバトの話は人間の傲慢さと集団心理の怖さ、世界の大きな流れというものを前にした一人の人間の無力さゆえの「祈り」に心打たれました。
伊坂さんのセンスあるセリフがデビュー作から存在していたなんて改めて脱帽ですし、やっぱりこのお方はストーリーテリングの天才だ…
まだ未読の物語も読むのが楽しみです
- 感想投稿日 : 2023年11月6日
- 読了日 : 2023年11月2日
- 本棚登録日 : 2023年11月6日
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