濃い話だった。なんというか、どろどろとした沼の中をもがきながら泳いでいる感じに似ている。息ができないぐらい、いろいろなものが押し寄せてきてつらかった。「生臭い」という言葉が作中何度も出てくるけれど、ほんとにそう。全面から臭いが立ち込めてきて、ちょっと気持ち悪くもなった。
花と淳悟の関係は、そりゃあよろしくないことはわかるけれど、あまりにも切実すぎてちょっとじんときた。こうやって絶対的に繋がっていたいと思える人間に、なんにしろ出会うことができたのはうらやましくも思った。けれど、その分離れるのがものすごくつらいのだけど。花が淳悟から離れようとしても離れることができない様子に、ちょっと沁みた。
1番最初の話から過去へ遡る書き方はおもしろいと思ったけれど、同時にこのひとたちはこういう結末を迎えてしまったんだなあと考え込んでしまい、なかなか読み進めることができなかった。もうそこで事実が提示されているから、読者の気持ちはどうにもならないんだよなあ。
「私の男」という言葉がこんなにも重いものとは。
(381P)
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
作者:さ行
- 感想投稿日 : 2012年7月14日
- 読了日 : 2012年7月14日
- 本棚登録日 : 2012年7月14日
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