Jポップとは何か: 巨大化する音楽産業 (岩波新書 新赤版 945)

著者 :
  • 岩波書店 (2005年4月20日発売)
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感想 : 35
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細かい部分の誤りや認識の浅さ、勘違い振りでは定評のある著者の相変わらずの仕事ではあるのだが、概観としてはかなりのよくまとまっている(思うに新書というのはそういうものなのかもしれない)。技術革新によって再生機器が安価になりひとり1台、2台という状況になり、さらに録音媒体がヴァイナルからCDそしてデジタルデータへと安価になった。プロトゥールスに代表されるDTM技術によって制作費も大幅に節約することが出来るようになった。

これらの技術革新とさらにバブル経済前後の「本当の豊かさ」からくる「自己表現欲求」がカラオケブームにつながりやがてカラオケは日常に溶け込んでいく。
これらのことが総て結実し、数字に結びついたのが90年代なのだろう(外資系レコードショップの日本進出とフリッパーズやクラブDJに代表されるリスナー体質の送り手の出現も見逃せない)。


音楽不況と呼ばれて久しいがフジロックなどのフェスブームやライヴ会場を埋め尽くす人、貸しスタジオの状況などを見るとCDや専門誌が売れなくなっただけであって、音楽自体は活性化しているのだ。自己表現欲求のあさましい対象(日本人の多くは音楽を聴く耳は持たないがカラオケを歌う喉だけは持ち合わせている)と化した日本はそれでも世界第二位の音楽消費国なのだ(ひとりあたりの購入数だと4位だそうだ。因みにノルウェーが上位なのはへぇという感じ)。


渋谷のレコ村は一時期の勢いは衰えたとはいえ世界最高のレコード屋さんが集まっていると思う。これらの店の品揃えが象徴しているように音楽に対して誠実な聴き手(オタクともいう)は世界トップレベルの層の厚さを誇っていると思うのだが(住宅事情もあって量はアメリカとかに負けると思うけど)。


閑話休題。

政治ですら"J-POP"と結びついた90年代。タイアップという術しか知らないレコード会社はそのツケを払いつづけて倒れるのかもしれない。鎖国に象徴される島国根性がJ-POPという世間知らずの坊ちゃんお嬢ちゃんを生み出してしまったのかもしれない。
最後に“「日本のポピュラー音楽が外国と肩を並べた」というファンタジー”を抱いているのは一部のマスコミ(=おっさん)であって、それこそ著者はその代表たるもんである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本・雑誌
感想投稿日 : 2018年11月20日
読了日 : 2010年6月8日
本棚登録日 : 2018年11月20日

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