エロ描写が多いけど、桜木さんらしい空気感はそのまま。
こういう『繋がりのある短編小説』を書くのが桜木さんはうまい。
ひとつひとつは微妙かもしれないけど、全体の繋がりでみると「うまいなぁ」と、思う。
ひとりの男とその男に関わったたくさんの女たち。
自分も誰かの物語の一部なんだよな、とあらためて気付かされた。
読んでいて色々な個人的なことを思い出して苦しくなって悲しくなって勝手に涙が出た。
沢山の女性と付き合ってきたセックスの巧い男性のことや、昔付き合っていた男性のことを思い出して、恋しくなって悲しくなって苦しくなって一度涙がぽろりと零れたら止まらなくなってわんわん泣けてしまった。
雪山で自殺するイメージやセーヌ川やドナウ川で身投げするイメージが離れなかった。
物語の内容にというのではなく、桜木さんの文章が醸し出す暗さや孤独感みたいなものに、私の心がすっぽりと取り込まれてしまったんだと思う。
相変らず冷たくて閑散とした世界だった。
湖に浮ぶ月みたいな小説。
やっぱり桜木さんの小説は好き。私に合っていると思う。
私が描きたい世界の文章版。
この装幀は小説のイメージに合っていると思う。
人のいない駅のホームというのは内容に沿ったモチーフだ。
モノクロームが似合う感じの小説だった。
人生の断片であり、ひとりの人生の記録である小説。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2015年5月8日
- 読了日 : 2015年5月8日
- 本棚登録日 : 2015年5月8日
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