宿命の交わる城 (河出文庫)

  • 河出書房新社 (2004年1月7日発売)
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本棚登録 : 244
感想 : 23
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 同作家の『柔らかい月』に苦戦していた最中、友達からカルヴィーノなら『宿命の交わる城』が読みやすくておもしろいと聞いたので読んでみることにした。

 同じ人が書いているから勿論基本的には同じような語り口なのだが、別の作家のようにも感じられる本だった。
 それに何より物語の作り方にびっくりした。まるで初めて訪れる異国の地で見たこともない美しい風景を目にした時のような感覚を覚えた。目から鱗というのだろうか、心の膜がぺろりと一枚剥がれたような気分がした。
 話はタロットを使って構成される。声ではなく指し示すカードの図柄で語り、そのカードは別の人の話とも交錯してまた別の意味合いで語られる。連なるカード、繋がる物語。もうそれは凄いとしか言いようがない。
 そんな話だからややこしいし真剣に集中して読まないとまるでさっぱりついていけなくなるのだけど、新鮮でとても面白い。
 描かれているタロットの絵もいい。私はしょっちゅう版画をやりたくなるのだが、またしても版画をやりたくなってしまった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: イタリア文学
感想投稿日 : 2010年6月9日
読了日 : 2010年6月9日
本棚登録日 : 2010年6月9日

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コメント 1件

猫丸(nyancomaru)さんのコメント
2013/07/09

「見たこともない美しい風景を目にした時のような」
クラシックな文体と簡単に言ってしまってはいけないのでしょうが、ベールが掛かって見え難くなってる向こう側を凝視するように読みました(そんな風に記憶されているけど、今読んだら違うかも)。。。

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