新装版 世に棲む日日 (1) (文春文庫) (文春文庫 し 1-105)

著者 :
  • 文藝春秋 (2003年3月10日発売)
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自宅待機でヒマなので久々の再読。司馬さんの本は若い頃は繰り返し読んだけれど、やはり竜馬がゆくや翔ぶが如くのような長編はそうそう何度も読めず、一番読み返したのは多分『新選組血風録』、次いで上下巻の『燃えよ剣』そして薄めの4冊この『世に棲む日日』。元気がなくなるとこれを読みたくなるのです。

1巻は吉田松陰が主人公。司馬さんの萩観光からするっとそのまま物語に入っていく導入部がいい。私は山口県民ではないけれど、松陰先生を呼び捨てにするのは気が引けるので以下、松陰先生で通します。

松陰先生は文政13年(1830年)に、杉家の次男として生まれ、山鹿流兵学師範である吉田家の養子となる。師匠は叔父の玉木文之進。この人の教育方針が、のちの松陰先生のストイックなまでに無私、かつ無謀な性格の基礎を作ってしまうのが興味深い。そして長州藩という藩の体質。

「藩は、人間のようである。」と司馬さんは書く。「三百ちかくある諸藩は、藩ごとに性格もちがい、思考法もちがっている。人間の運命をきめるものは、往々にしてその能力であるよりも性格によるものらしいが、藩の運命も、その性格によってつくられてゆくものらしい。」ヘタリアみたいに藩を擬人化したら面白かろう。長州藩を擬人化したら、たぶんまんま松陰先生か高杉晋作のような感激屋で詩人気質でありながらも目的のために手段を選ばない猪突猛進型になりそうだ。

松陰先生は二十歳で江戸留学、各地を遊学、さまざまな師匠に学び(とくに佐久間象山)、肥後熊本藩の宮部鼎蔵ら、終生の友人を得る。ある時その宮部らと東北旅行を計画するが、約束の期日に藩の手形が間に合わず、友情を重んじる彼は脱藩の大罪を犯すことに。結果、帰国後、藩を放逐され家督も奪われ、浪人となってしまう。ただ藩の温情で、身柄は実家の預かりとなり、再び江戸で勉強することを赦される。

ところがその嘉永6年(1853年)、ペリーが浦賀に来てしまったからさあ大変。大興奮で駆けずりまわる松陰先生、今度は異国船への密航を企て・・・(つづく)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  ○司馬遼太郎
感想投稿日 : 2020年4月12日
読了日 : -
本棚登録日 : 2012年9月21日

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