ほんとうの花を見せにきた

著者 :
  • 文藝春秋 (2014年9月26日発売)
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本棚登録 : 1200
感想 : 145
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優しく孤独なバンブーたちに、しっかり生きろ!と言われたような気分です。

『小さな焦げた顔』
『ほんとうの花を見せにきた』
『あなたが未来の国に行く』

竹の吸血鬼バンブーをめぐる優しく悲しい物語。
ムスタァも洋治も茉莉花もとても愛しいです。

『小さな焦げた顔』
悲しくて切なくて…涙がところどころで溢れてしまってもう…
あんなに幸せな日々を送っていたのにどうしてこんな結末になってしまうの、と…
ムスタァと洋治が梗ちゃんを慈しみ、愛し、一生懸命育てる姿がほほえましいです。2人が注ぐ梗ちゃんへの愛の深さといったら!
人間の成長に感動し、「生きる」こと、「火」に憧れるバンブー。
人間は死んでしまう、だからこその、人間の価値があるということに気付けなかった梗ちゃん。
バンブーの純粋さと優しさ、人間のあさはかさ、愚かさ。
『あなたが未来の国に行く』を読むと、洋次の最後の言葉が繋がります。さらに切なく、苦しい気持ちになりました。

ムスタァと洋治の朝の日課がとても美しく描かれている一方で、その行為はバンブーという生き物の孤独さをなんとも象徴していて…吸血鬼ものってこんなに切ない要素が満載なのですね…。
自分の相棒は洋治だけと言い、孤独の道を選んだムスタァの誠実さと優しさにも心打たれました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2015年3月17日
読了日 : 2015年3月11日
本棚登録日 : 2015年3月17日

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