カシオペアの丘で(下) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2010年4月15日発売)
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感想 : 257
4

※上巻と同じ内容です。

かつて炭鉱で栄えた北海道の街、北都。夜中に家を抜け出し星を見に行った4人の少年少女は、この丘をカシオペアの丘と名付け、将来遊園地を建てることを約束する。

そして少年たちは大人になった。


う~ん、泣ける。特にラストちょい前の誕生パーティのシーンはたまらない。
やっぱりこの人の連載モノはいいねぇ。

いい作品に巡り合えた勢いでちょっと重松論を書いてみる。


実はこの著者、長編が苦手というか長いものを書くと必ず中盤がダレる。
そのせいもあってデビュー後しばらくはまったく評価されていなかった。個人的にはビフォア・ランはもっと評価されてもよかったと思うけど。

その後「見張り塔から、ずっと」等の短編集を発表して、キレのある短編を書く筆力の高い作家として認知されはじめたが、長編はというと「舞姫通信」や「四十回目のまばたき」等のやっぱり中盤がダレる作品。

とはいえ短編のクオリティの高さと圧倒的な筆力で評価は着実に上がっていった。当時の書評や解説では、上手い上手いばっかり言われていて、内容に踏み込んだものは少なかったように思う。

そんな中、著者が連載を持つことになる。連載時の作品名は「マジカル・ミステリー・ワゴン」。これが見事にはまる。

連載という性質上、次回へのヒキを作らなければならず、そのヒキにより中盤がダレることがなくなった。
元々ストーリーや設定には人を引きつけるものがあったし、ストーリーテリングでは当代随一の作家。中だるみさえしなければ面白くないはずがない。この作品は加筆、改題の後単行本化され、著者の出世作となる。改題後のタイトルは「流星ワゴン」。

個人的には関根勤がTV番組で紹介していたことが印象深い。女子アナの好きな作家を聞かれた時の回答が、村上春樹から重松清に変わっていったのもこの頃。

女子アナはさておき、実はいまでも重松清は長編の苦手な作家だと思っている。映画になった「疾走」も中盤はダレてしまっている。
やはり連載→改稿→単行本化がこの人にとってはベストじゃないだろうか。


話をカシオペアの丘に戻す。
上手・下手で言えば本作は改稿は流星ワゴンより上手い。相当丁寧に加筆、改稿をしたのだろう、連載モノのぶつ切り感をあまり感じさせない。またストーリーの面白さ、筆力の高さについては前述の通り当代随一。
ただしプロットに関しては流星ワゴンとの類似性を感じる、というか非常に悪い言い方をすれば二番煎じ。そのため評価は星4つ。

いや、それでも充分面白いんだけどね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年5月13日
読了日 : 2010年5月2日
本棚登録日 : 2012年5月13日

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