戻り川心中: 傑作推理小説 (光文社文庫 れ 3-4)

著者 :
  • 光文社 (2006年1月1日発売)
4.06
  • (187)
  • (167)
  • (120)
  • (15)
  • (3)
本棚登録 : 1668
感想 : 180
5

面白かった。米澤穂信が薦めていたのと評判が良かったので読んでみた。

「藤の香」
代筆屋という伏線。故郷への文と目の前の少女の行く末を考えて、さらに己の寿命まで考えると成敗したくなるのもわかるな。お縫の心情を推し量ろうとするまなざしが良かった。

「桔梗の宿」
二階の窓から花を散らすという仕草になんともいじさらしを感じてしまう。言葉にして直接伝えられない感情を感じる。福村も人形を操ることで何かを伝えていたとしたらそこが二人の共通点になるのかな。

「桐の柩」
主人公がなんか百合の間に挟まる男というか、二人の愛の渦中にいるというか、面白い立ち位置。
主人公のありようがあまりにも希薄なのが良い。
桐の棺というダイナミックな小道具、大道具?の使い方が良い。画面映えしそう。

「白蓮の寺」
花を埋めるという動作について考えたことも無かったので、そんな場面を見たら忘れられないし怖さも覚えるだろうなと思った。
前半の夢の部分はどうにも退屈だった。他人の夢ほどどうでもいいというがほんとそれ。映像化したら美しいだろうが。
なんとも奇妙な出来事を聞いたり覚えていたりで、じゃあ真実は?と探求していくのが面白かった。
母親が目の当たりにした春のあぜ道で女が突然死んだのは、母親の面影に誰か(女の夫か知りあい)を感じたからでは、という考察を見たが、なるほどと思った。それなら、母親も自分の子供が宗田に似てくるかも、似ていると感じるのもわかる。

「戻り川心中」
丹念に過去の場所を訪れて振り返るのが現場百篇って感じで面白かった。また、苑田の在り方が、とんでもすぎて西尾維新を思い出した。己の才のために人生を賭ける。そのまんますぎてすごい。すごいから常人ではないんだろうけど。それに付き合わされての心中はむごいな。トリックのために人を殺す麻耶雄嵩にも通ずるな。

全体的に花をモチーフにしてるが、説明てきではなくさりげなく小道具として、背景や形、匂い、色として登場しているので品があって面白かった。文体も読みやすい。大正時代も感じられて面白かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2023年5月19日
読了日 : 2023年5月13日
本棚登録日 : 2023年5月19日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする