疾走 下 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店 (2005年5月25日発売)
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感想 : 735
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初めて読んだときの衝撃たるや・・・
しばらくほかの本を読めなかった。
ほかに移る前に連続で4回読み返したかな。
それくらい繰り返し読んで消化しないといけなかった。

重松作品にはそれまで
「いろんな困難はあるけれど、最後はあたたかいんだよね」みたいなイメージを
もっていたので・・・こんなに残酷なことができる人なのか!と怖くなった。
でも、まったく救いがない中でも、
たしかに重松作品だなと思うフレーズがたくさんあって、
かなり影響受けたと思う。

二人称で語られているのも、めちゃめちゃ合うんだよな。
「おまえ」って言われると自分に言われているような気になるというか、
自分も苦しくなってきて本当にしんどい。
大人に振り回されてしまうシュウジ。
「幸せになるために人は生まれ、生きていくというのなら――
その「幸せ」の形を見せてくれ。ここを目指せばいいんだ、と教えてくれ」
まだ子どもなのに。。。やるせない。
子どもだからやっぱり限界はあるし、逃げても逃げても檻の中で、
それを上から見ているかのような語り手が「おまえ」って語り続ける。
すごく残酷。

ずっと息苦しくて、
読んでいる間はまさに「疾走」しているかのような感覚だった。
(こんなに秀逸なタイトル・・・)
最初怖いなと思っていた表紙も、
読み終えるころにはいとおしく(?)思えてきてしまうくらいに。
はぁ、しんどかったな。

「わたしはエリのために祈ります。シュウジのために祈ります。
災いや不幸せをとりのぞくためではなく、二人が、
災いや不幸せを背負ったままでも前に進めるように。
いや、前に進む必要すらないかもしれない。
立ち止まっていても、うずくまっても、
体を起こす気力すらなく寝そべっていたってかまわない。
ただ、絶望しないでほしい。
わたしが祈るのは、ただそれだけなのです。」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年2月20日
読了日 : -
本棚登録日 : 2022年2月6日

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