疾走 下 (角川文庫)

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著者 : 重松清
  • 角川書店 (2005年5月25日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043646036

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疾走 下 (角川文庫)の感想・レビュー・書評

  • つらい。
    きつい。
    苦しい。
    死にたい。
    重い言葉ばかりが浮かんでくる物語ではあるが──
    やはり私は、この小説を多くの人々に読んでもらいたい。
    何故なら。
    どんなに苦しくても、最後には希望の光があなたを包んでくれるはずだから。

    「いつか……走れるから」
    「いつか……走ろう、二人で」

    重松清。数多の涙する名作あれど。
    この作品は作者自身がわが身を削るような思いで、書ききった名作だと思う。

    珍しい二人称の語りでの文章。
    でもこの物語は、一人称でも、三人称でもここまで心に届くような作品にはならなかったはずだ。
    二人称の「シュウジ、おまえは──」というような語り口だからこそ、心に響く物語。

    すさまじいまでの迫力で、悲惨な現実が少年シュウジをどこまでも追い詰める。
    弱者が、これでもか、というほど虐げられる。
    途中までは、ある意味、映画「ダンサー・イン・ザ・ダーク」の悲惨さと遜色ないかもしれない。
    つらすぎて、読むのをやめたくなる人もいるだろう。
    それでも──
    最後まで読んでほしい。
    シュウジの命を懸けた懸命の走りを、最後まで追いかけてほしい。
    最終ページでの神父の言葉の意味を深くかみ締めてほしい。
    それが分かれば、誰もが涙を浮かべるだろう。
    それは哀しみの涙ではなく、感動で体が打ち震えるときにあふれ出る涙だ。
    その言葉がそれまでの悲惨さを全て吹き飛ばし、未来に希望の持てる物語に一変させる。

    個人的には、あまりに読むのがつらすぎて好きな傾向の作品ではないはずなのに、読み終えた後、感動の涙がとめどなくあふれ出た。
    しおれ、枯れ果てぬばかりになっていた花に、
    その涙の雫がこぼれ落ちたことで、再び花が生気を取り戻した。

    本物の小説家、重松清の真髄を見せつけた不朽の名作だと思う。
    こどもを主人公とした多くの名作を出し続けている重松氏だが、
    小説家としての素晴らしさは、やはり
    「その日の前に」「君去りしのち」や「カシオペアの丘で」などの、生と死に真っ向から向き合う作品でこそ、彼の真髄を発揮するように思える。
    彼が小説家になるために師事した、早稲田の(あれ? 名前忘れちゃった。平岡先生でしたっけ? たぶん)平岡篤頼教授が
    「重松君。物書きは、やはり長編を書けなければだめだ」
    と諭されたという話をどこかで聞いた記憶があるが、師匠からの叱咤は、彼の心の中にしっかりと刻み込まれているはずだ。

    この作品を「最後まで救いのない物語」と感じた方のレビューを読んで、
    最終ページの文章の意図するところをどう理解したのだろうかと気になった。
    それが分かっていても「救いのない物語」と読んだのであれば、返す言葉はないけれど。
    もちろん、小説の読み方は人それぞれ、正解などないことも分かっているけれど。
    それでも、最終ページの神父の語りをもう一度だけ読んでほしい。

    そして、シュウジ。
    最後の最後だ。
    聞こえないか? シュウジ。
    我が家の玄関前の、なだらかな坂道をのぼってくる足音が。
    かけっこが得意な望に付き合って家の近所を一回りして、望よりずいぶん遅れて、いまゴールイン間近のひとの足音が、シュウジ、おまえにも聞こえないか?

    ここから最後の一行までの語りこそが、悲惨な話としてそのまま終わらせないために、重松氏が渾身の力を振り絞った文章のはずだから。
    (不覚にも私は、この数ページ前から涙が止まらなくなった。そして、ラストまで読み終えて「そうか。シュウジ、良かったな」と、目の前になどいないはずの彼の肩を優しく叩きたい気持ちになった)

    ブクログ様、すみません。
    「グレイメン」読まずに、こっちのレビューを書いてしまいました。申し訳ない。
    でも、まだ二週間あるから、... 続きを読む

  • この町にいても嫌な未来しかない。主人公シュウジは町を出た。大阪で性と暴力に溺れ、ヤクザを殺す。東京でずっと会いたかったエリに会い、その叔父を刺す。エリと共に元の町に帰ったものの警官に射殺される。

     誰か一緒に生きてください。強い「ひとり」に憧れ、それを目指したからこその言葉だろう。強く胸に響いた。結局何一つ報われることは無く、まさに煉獄の道のりを走り続けたシュウジ。
     シュウジがこの世に作り出した命。シュウジの子「望」。最後の場面でこの子とエリが元気に走り回る姿が描写されており、初めて心温まった。しかし、「伝道の書」に書かれた一文「この世に生れ落ちるよりも流産して闇に消え去った方が幸せだった」を頭に思い浮かべてしまった。心が暗くなった。

  • 15歳になった少年・シュウジの人生は、相変わらず悪いほうへとしか進まない。
    兄の放火事件をきっかけに一家離散に追い込まれ、故郷を捨て、ひとり東京へ向かう。

    「感動のクライマックス」という触れ込みの下巻だが、感動というには違和感がある。
    後味は決して良くはないし、読み返したいとも思わない……けれども、やはり重松清の文章力(さり気ないのに、グイグイ惹き込まれる)は圧巻。

  • 読み終わったあと、何を感じるだろう?

    たった15歳のシュウジを絶え間なく襲う悲劇。加えてアカネやエリ、みゆきの話まで加わって、上巻以上の破壊力。クライマックスも決してハッピーエンドではない。だが私には希望が感じられた。

    「ぼこぼこ、あなぼこ」を求めたシュウジ。でもそれは絶望ゆえのことであり、本当はそうではなかった。「おまえ」と語りかけていた者の正体がわかったとき、そして「ひとり」が「ひとつ」になったとき、あれほど不平等だったシュウジの人生が報われた気がした。ラストは不覚にも涙してしまった。文句なしの大傑作だ。

    追記:作品の趣旨を壊してしまうことは承知で、いつの日か重松氏に「最後にもしシュウジが転ばなかったら」というアナザーストーリーを書いていただくことを切望したい。

  • 少年の「疾走」に胸を震わせた。

    すさまじい勢いで駆け抜けた彼の人生に涙を禁じ得ない。そして彼とともにうまく人生を歩くことのできなかった少女。

    辛く悲しい読後感だった。作者の狂気に胸を切り刻まれた。

  • 読み終わった。
    レビューが書けないほど打ちのめされたのは初めてだ。
    自身で読んで欲しい。感じて欲しい。

  • とてもいい終わり方だと思う、重松清らしいといえばそうかもしれない。すごく残忍だったけど優しい男の子の話だった

  • 20140308再読了。
    (上)では読むことを勧めたけど、誰もが読んでいい本ではありません。
    描写のキツい所もあるし。
    でも、読んだ後に何も感情を起こさない人はいないはず。
    誰もが弱い人。
    人は誰もが弱い人だから。
    小説の中の話ではありますが、その後を書かれた人、書かれなかった人の幸せを願ってやみません。

  • 読み出したら途中で止められない、という点では面白い本なのだと思う。ただし好きか嫌いかで言えばあまり好きではないし、子供には読ませたくない。読後なんとも言えない気分になった。村上龍に似てるかも。

  • 重松清は、「流星ワゴン」ともう一冊くらい読んだが、どうも“上手さ”が肌に合わない気がして、その後は手を出していなかった。が、今回はフラフラとこの本を買うことになり、それでも「すぐに挫折するかもしれないから」と上巻だけ購入。結局は慌てて下巻も注文し、届くのを待ちわびるという結果に。

    ストーリーも、内容だけ見れば不幸の連続だし、ヤクザはとことん暴力的だし、エグイ場面はこれでもかというほどだが、なぜか嫌な気分になったり、読むのを止めたいとは思わせない。
    主人公が救われることを、ハッピーエンドを願って読み進めるのではなく、これだけの荒波なのに、力いっぱい泳いで、もがいて、それでもやはり水に飲まれていく彼の姿が美し過ぎて、目が離せない。


    シュウジ、神父、エリ。みんな強い。たとえ勝てないとしても、生き切る姿に、涙が出た。

  • 辛すぎるエンディング。シュウジを取り巻く環境は上巻からより劣悪になり、シュウジ自身もどん底まで堕ちていく。アカネとみゆきとのホテルのシーンはほんと見れたもんじゃない。。エリと再会することで少し救われれば良かったのに。電話がもっと早く掛かってきて誰か一緒に生きてくれれば良かったのに。一度堕ちてしまえば這い上がるのは不可能なのかな。語り手の神父の言葉が彼に届けば少しはまともな未来があったのかな。辛く重い作品だったがあっという間に読了してしまった。重松清、こういうのも書くんだね。2012/142

  • 重松清はやっぱりいいですね。
    生身の「にんげん」を描くのがとにかくうまい。
    主人公の心の動きに共鳴できる部分が多く、それだけ物語りに深く引き込まれます。
    ただ、それだけにこの物語はちょっと重く辛いです。途中から読むのが苦しくなる位です。
    主人公を次から次へと襲う「不幸」の連続に、「こりゃちょっとやりすぎでは?」と、特に後半ちょっと感じないわけではないですが・・・
    シュウジとエリ、二人とも精一杯生きて強く生きて、それがあまりに辛くひどく切なく、心打たれます。

  • 暗く重く、辛い。読んでいる最中に気分が悪くなる場面も。それでも、読むことをやめられない、記憶に残る本です。

  • なんだか、悲しくて救われない話なんだけれども

    印象に強く残った作品。他の重松作品も読んでみないと。

    作品中一番気になった文章

    仲間がほしいのに誰もいない「ひとり」が、「孤立」。

    「ひとり」でいるのが寂しい「ひとり」が、「孤独」。

    誇りのある「ひとり」が、「孤高」。

  • 上巻でひとりを求め続けたおまえだが、どうしょうもなく押し寄せる寂しさと孤独感に襲われる。そこへ屈託のなく接して来るアカネに心が委ねていく、行く宛てもなくたどり着く大阪でアカネと向き合う「セックスがしたい」誰かとつながっていたいと思う感情が芽生え始める。
    故郷に居場所がなくなったおまえはエリの元へ向かう、途中に立ち寄ったアカネのもとで地獄をみることになる。新田を殺しアカネとみゆきのおかげて東京へと逃げ出すことが出来た。彼女らひとりひとりとのつながりの意味を知る。
    エリと会ったおまえはエリの東京来てからの日々を知る。やはりひとりだったエリをどうしても救い出したい、「にんげんは、しょせんひとりなんだ、とおまえは思う。ひとりだから、ふたりになりたいんだ、とおまえは願う。ふたりでいてもひとりひとりだから、ほんとうは、ひとつのふたりになりたいんだ、とおまえは祈る。」
    エリの叔父を刺してしまったが、エリをひとりから救い出すことはできた。故郷へかえったふたりだが、おまえの物語はそこで終焉を迎える。

    エロスとグロテスクな内容に休まることなく読み進み、エリを救ったことで、思った以上にハッピーエンドなお話は、おまえが人生の激動時期を疾走する作品。

  • 2日で上下巻一気に読んだ。
    「疾走」のタイトルの意味するところは違うところにあるけれど、スピード感を持って読めた。

    重いテーマだし、最後も救いのない終わり方なのだけれど、これだけスピード感のある文章はすごい。
    でも救いのない終わり方とは言え、僕はシュウジとエリがふたつのひとりではなく、ひとつのふたりになれたというだけで、少なくともシュウジにとっては幸せだったんじゃないかと思う。
    しかも、どういうわけか、シュウジにとってそれが必要十分な量の幸せであって、あそこで幕を閉じることでバランスが取れているような気すらする—もちろん、シュウジは罪を償って、でもエリと新しい未来を切り開くというハッピーエンドだったほうが、僕もほっとすると思うけれど、筆者の描きたかった「運命」というのは、最後の携帯が鳴ることも含めて、あくまで「運命」として厳然とそこにあるのだと思う。


    個人的には、「走る」ことが「生きている実感を得ること」にダイレクトにつながっているのが、最近読み返したコインロッカー・ベイビーズのキクと重なったり。テイストは全然違うし、キクとシュウジの描き出すものも全然違うんだけれども。

  • 神父さんがお前に向けた手紙だったのか。この小説は永遠に読んでられる。人間の誰しもが持つ負の部分が、先へ先へとページをめくらせる。シュウジの幸せを望めないくらい、シュウジの「ひとり」に惹かれていく。本当のひとり。人間という「ひとり」の存在を突き詰めた至高の小説。終わってしまったという残念さで☆4つ。もっと長くした3部作でも良かった。あなたの「ひとり」は「弧◯」
    作中名言「あの頃は、逃げるためではなく、追いかけるために走っていたのだ。なにかから遠ざかるためではなく、なにかに近づこうとして走っていたのだ。 」

  • 上巻でどん底にまで堕ちたと思っていたが、下巻は軽くそれを上回る(下回る?)堕ちっぷりだった。まさに転がり堕ちるように悪に巻き込まれていく。
    こうして普通の少年少女が犯罪に手を染めていくんだなと、その過程がよく分かった。
    結局シュウとエリに救いはあったのかなかったのか・・・。
    2017/01

  • 疾走感のある前半から、焦燥感のある後半へ。儚い灯火が、フッと消えてしまうような読後感。

  • この本を読んでて、ご飯よーって言われた時に
    涙が出そうになった。

    凄く残酷で悲しい話なのに、なんとなく他人事に思えなかった。シュウイチの人を見下す心とか、そんな兄貴に逆らえない家族。
    そんな服装で来るな恥ずかしいと兄貴に罵られる母親。暴力にやり返せない父親。

    お金がないとか、高校で勉強が上手くいかなくなったとか、あちこちに落とし穴がある。
    父も母も家族みんな。

    私は運が良かっただけだったんだな。

    みゆきの最期、山中のシーンに震えた。
    ホテルのシーンも、ただただ地獄。
    世の中残酷なくらい金金金。

    エリのお母さんのシーンが印象的。
    お母さんはしあわせな家庭が欲しかっただけ。
    なのに娘に何も届いてないのが悲しかった。

    ラストシーン。
    私はハッピーエンドだとは思わない。
    誰もシュウジを救うことは出来なかった。

    本当の心の奥底には触れられないのに、
    どうして人はこんなに、誰かとの繋がりが欲しいんだろう。

  • 間違いなく下巻も途中までは止まらない面白さなのだが、
    結局エリの孤高部分がなー…。

    全く達観していないし、孤高なら孤高で
    現実味のない女子高生って設定でいいのに
    「まあでもやっぱりこの年の子が背伸びして
     寂しいんだよね…かわいそうな子なんや…」
    みたいな性格付けになってしまっているのが惜しい!
    あれほどの不幸な目に会っているのだから
    単なる厨ニにしないで欲しかった…。

    最後も未成年(に少なくとも見える)シュウジを
    警察があんなんしてしまっていいのかしら。

    余談ですが他の人のレビューを検索する際に
    この作品が実写映画化していたことを知りました。

    公開時のキャッチコピー↓
    ---------------------
    "ひととつながりたい”ただそれだけを胸に
    たった15年の短い生涯を終えた少年の軌跡
    ---------------------

    ネタバレすぎる!

  • ラストが素晴らしい。疾走するごとく一気読みしました

  • ホテルのシーンは、たった15歳の男の子にあそこまでするかと胸糞悪くなりました。
    新田の狂いっぷりが怖すぎた。
    ドクズの徳さん、弱い者の足元を見て詐取する所長、シュウジの両親、エリの叔父叔母、ろくな大人しか出てこず本当に辛い人生だったシュウジ。
    神父さんとエリが唯一の救かな。
    あかねのせいで新田に酷い仕打ちを受けたので、あかねのことは最後まで好きになれなかった。

  • 上巻から、矢も盾もたまらず読み進めてしまい、たったいま読了。
    明日というか、正確には今日も(ただいま、‘25 or 6 to 4’なので)休みで良かった。
    んー、上巻に比べると下巻はよくあるタイプ、といってはなんだけれどもの逃避行物語。
    この世のダークサイドの髄を集積したかのような上巻ほどのインパクトには欠けるとはいえ、ビザールな描写や性にまつわるダーティな表現はこちらの方が多い。
    読んでいる間、しきりに反芻したのは園子温の『ヒミズ』。
    あっけなさと刹那&切なさが重なったクライマックスはアメリカンニューシネマ風。それぞれのシーンが目に浮かんで来るよう。
    重松清の作品としては異色でありながら集大成でもある。
    聖書からの引用の多さと神父の配置に、そこはかとない違和感を感じる。重松って、そうなんだったっけ?

  • 古谷実の「ヒミズ」より“どうしようもない感”というか、人生や将来に対する絶望感が大きい
    読んでて辛すぎる
    いかに自分が恵まれた環境にいるのか、自分が抱えている悩みなんて、自分の力で“どうにかなる”ことを考えると、もっと強く生きなければと思う。

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誰か一緒に生きてください-。犯罪者の弟としてクラスで孤立を深め、やがて一家離散の憂き目に遭ったシュウジは、故郷を出て、ひとり東京へ向かうことを決意。途中に立ち寄った大阪で地獄のようなときを過ごす。孤独、祈り、暴力、セックス、聖書、殺人-。人とつながりたい…。ただそれだけを胸に煉獄の道のりを懸命に走りつづけた少年の軌跡。比類なき感動のクライマックスが待ち受ける、現代の黙示録、ついに完結。

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