著者の「ははきぎほうせい」さんはTBSから大学に入り直しお医者さんになられたそうです。
10代半ばの島崎由紀さんが堕胎するところから物語が始まります。
秀丸さんや昭八さん、チュウさんの病棟に入るまでのいきさつなどを伝えながら、精神科病棟の日常を描いてゆきます。
由紀さんとの接点はどのようにやってくるのかと読み進めるうちに、想像を超えて酷い展開が待っていました。
読み終えて、世帯主の人柄の大切さや、 閉鎖病棟の壁の外にも病巣は存在すること、閉鎖病棟の中の平安も、実は法だけじゃ守りきれない現実があることも伝えています。いえ、閉鎖的な性質だからって諦めずに善良を導く法整備と見守りが必要だと思いました。
新川先生や婦長、主任や裁判所の人々も暖かくて胸がいっぱいになりました。
ただ、秀丸さんが奪った命、救った命は、どちらも測ったり比べられない大切な命。それは忘れてはいけないと思っていたけど、それを誰よりも理解しているのはおそらく秀丸さん。
平気で幼い義理の娘を傷つけ続けた由紀さんの継父や、多くの患者を気まぐれに暴力で罪の自覚もない様子で傷つける重宗。自分が罪人かもしれないという自覚もないことの恐ろしさ。
先生達が聞いた「自分はどこが病気だと思う?」の問いに「沈黙」するチュウさんにそれでいいと言う先生。
その無言の空白のなかに確かにあるものを、私も持っていたいです。
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- 感想投稿日 : 2018年2月13日
- 本棚登録日 : 2018年2月12日
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