存在の耐えられない軽さ (集英社文庫)

  • 集英社 (1998年11月20日発売)
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難解な本の代名詞のようになっている『存在の耐えられない軽さ』。この題名からして難解である。なぜ耐えられない「重さ」ではなく「軽さ」なのか。
人間存在の一回性を「軽い」と表現したのは、ニーチェが永劫回帰を「もっとも重い荷物」と呼んだことに由来している。永遠に繰り返されるものが「重い」なら、一回限りのものは「軽い」。
小説の中でしばしば引用されるのが、Einmal ist keinmalというドイツ語の諺である。一度しかなかったことは、一度もなかったのに等しい。この言葉に従うなら、一度きりの人生など、何の重みもない。
どのような人生も、所詮は一回限りの現象でしかなく、永劫回帰という重荷の前では重さを失って、空気のように軽くなり、無意味なものになってしまう。
もし人生を繰り返すことができるなら、いくつもあった分岐点に立ち戻り、果たしてどちらの選択が正しかったのか判断を下すこともできよう。しかし、同じ人生を二度生きることはできない。この軽さこそ、耐えられない軽さである。
考えすぎだ。そうかもしれない。考えたくないなら、それも勝手である。だが、考えたくないということは、やっぱり人間は耐えられないのかもしれない。存在の軽さに。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2017年6月6日
読了日 : -
本棚登録日 : 2011年10月18日

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