モンテ・クリスト伯 7 (岩波文庫 赤 533-7)

  • 岩波書店 (1957年1月25日発売)
4.22
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本棚登録 : 1008
感想 : 99
5

今回のレビューであるが…
前半は最終巻である7巻のレビュー
後半は全編のまとめとする
もし「モンテ・クリスト伯」を未読だが興味のある方は後半部分を参照いただけると良いかもしれない

泣いても笑ってもとうとう最終巻

毒を盛られながらも生き延びたヴァランティーヌ
体調不良の中、幽霊に遭う(笑)
正体はマクシミリヤンからの助けるに応えることにしたまさかのモンテ・クリスト伯
もちろんモンテ・クリスト伯はやることなす事が完璧なため、ヴァランティーヌすなわちヴィルフォールの屋敷の隣の空家を借り、徹底的に見守るのだ
モンテ・クリスト伯からヴァランティーヌはサン・メラン夫妻と自分を殺そうとする犯人を知り、ショックを受ける(人の良いお嬢様だからなぁ)
モンテ・クリスト伯はヴァランティーヌに必ず命を守ると誓い、自分を信じてほしいと懇願
ヴァランティーヌはその通りにすると誓う
……
が、ヴァランティーヌは死亡
(えー完璧主義のモンテ・クリスト伯がしくじる訳がない!…ってことは…⁉︎⁉︎⁉︎)
マクシミリヤン、父親ヴィルフォール、祖父ノワルティエらが大いに嘆き悲しむ
絶望のマクシミリヤンは自らの命を絶つ決意をする
何とか留まらせたいモンテ・クリスト伯は自身の正体を告白
マクシミリヤンとその家族は父を救ってくれた恩人とわかり感激のあまりよろこびにむせかえる
マクシミリヤンも放心状態になるものの、簡単に気持ちは変わらない
モンテ・クリスト伯はマクシミリヤンに何とかあと1ヶ月だけ生きて欲しいといい、約束させる(何があるのだろう…⁉︎)

さて最大の宿敵であるヴィルフォール
父であるノワルティエの厳しい視線からももはや逃れられない
やるべきことはわかっている
4人に毒を盛った犯人、そう自分の妻に制裁を課すのだ
夫や子供の顔に泥を塗るようなことは、まさかしやしまいと夫人を追い詰める
おれの帰ってくるまでに裁きをつけないでいたなら、この手で逮捕すると言い放ち、外出
外出先はベネデットの公判を行う裁判所である
ここでベネデットは自分の名前を尋ねられ、姓名はわからないが父親の名前ならわかると言い、父の名前と父であるヴィルフォールが生き埋めにしたことまでを告白する(刑務所に面会に来たベルツッチオに全てを聞いた模様)
ついにヴィルフォールも観念し、後任の検事総長からの沙汰を待つと言いフラフラと帰宅する
道中彼は放心していたが、やがて妻のことを思い出す
彼はその女に対し死刑の宣告をしたのだ
自分の罪深さゆえに、妻にも罪という影響を及ぼしたのだ!それなのにこのおれが彼女を罰するなんて…
死なないでくれ…痛烈に願いながら急いで帰宅するが、間に合わず
さらには息子も道連れにしていたのだ
その絶望が絶頂の最中、モンテ・クリスト伯が登場し、正体を明かす
しかしヴィルフォールの息子の死を見たモンテ・クリスト伯はショックを受け自分の復讐の権利を踏み越えてしまったことに気づく
一方のヴィルフォールはとうとう気が狂ってしまう

モンテ・クリスト伯はマクシミリヤンとともにパリに別れを告げる
そしてまずマルセイユでメルセデスに会う 
すっかり落ちぶれた貧しい暮らしとなったメルセデスと息子のアルベール親子
アルベールは二人の明るい未来のためにアルジェリア騎兵隊に志願(立派になったアルベール君!)そしてまさに出帆したばかり
メルセデスは悲しみに一人沈んでいる
ダンテスが復讐鬼になったのも自分のせいだと責めるメルセデス
そんなメルセデスを誠心誠意友人として慰め、そして二人は永遠の別れをする
メルセデスとの別れは辛く、またヴィルフォールの息子までが死んでしまったことで心の大きな変化と対峙するモンテ・クリスト伯
気持ちの整理を続けながら旅を進める
そしてあのシャトー・ディフのかつて自分のいた土牢へ行く
そこで案内人の診察によりファリア司祭の残した書物を手に入れることができ、何かが吹っ切れる

一方のダングラールは、モンテ・クリスト伯の策略により、とうとう金銭的に完全追い詰められ、逃亡を決意
そして道中のイタリアで山賊ルイジ・ヴァンパの手下に捕まる
金のものを言わせてきたダングラールに相応しい仕打ちが始まり、苦しむ
散々苦しんだところにモンテ・クリスト伯が登場し、毎度の如く正体を明かす
結局ダングラールは5万フラン貰い、自由を得る(だいぶ甘い復讐に感じるが、モンテ・クリスト伯も既に心の整理がついたからなのだろう)

さてモンテ・クリスト島にマクシミリヤンを招待したモンテ・クリスト伯
例の生き続けるという約束の1ヶ月である
マクシミリヤンの死に対する希望は変わらず
モンテ・クリスト伯がどれだけ慰めても、励ましても、頑として死にたいと言う
どうにもマクシミリヤンの心が変わらないことを知り、モンテ・クリスト伯は最後の手に出るのだが…
そう死んだとされたヴァランティーヌの登場
(でもなぜここまで引っぱったのかよくわからない…)
そしてエデを自由にしようとするが、エデはモンテ・クリスト伯と別れるなら死ぬと言う(やったー!)
モンテ・クリスト伯は
〜わたしを敵に対して立ちあがらせ、わたしを勝たせてくだすった神さまは、わたしの勝利の果てに、こうした悔恨の気持ちを残させたくないと思っておいでなのだ
わたしは、我と我が身を罰しようと思っていた
ところが神さまはわたしをお許しくださろうとおっしゃるのだ〜
そう考え、運命を受け入れエデと生きる決意をする
そして最後にマクシミリヤンへの手紙
〜この世には、幸福も不幸もあり、ただ在るものは、一つの状態と他の状態の比較にすぎない…
きわめて大きな不幸を経験したもののみ、きわめて大きな幸福を感じることができる
人間の智慧は、すべて次の言葉に尽きる
待て、しかして希望せよ!〜


いやいや最初から最後まで一貫して面白い!
この長さで延々惹きつけ続けられるのもなかなかじゃありませんか

【自分なりの解釈とまとめ】
モンテ・クリスト伯は大きく分けて3遍から成るように思う
最初の一部目はエドモン・ダンテスという青年を知るための紹介とそこから地獄に落とされ14年もの間獄中生活で全てを無くし死の極限まで行きながらも、復讐のために残された何かを搾り出しながら生まれ変わろうとするまで
第二部はモンテ・クリスト伯となり、巧妙な復讐劇を仕掛け、実行
第三部は復讐が終わり、何を思いどう生きるのか

【なぜ面白いか】
当初復讐劇で7巻もどう展開するのか⁉︎
そんな風に読みはじめたのだが…
散りばめられたジグソーパズルのピースが、圧巻の方法で回収され収まるところにピタっとハマる
痛快さ
また復讐と言えども直接的に手を下すわけではなく、家族や過去の弱点、人の欲望や野心を洗いざらい見つけ出しジワジワと炙り出す
使えるものはとことん使う
金で解決することは惜しまない
この辺りのエンタメ度の高さは見事

そしてモンテ・クリスト伯の人柄 
徹底した努力と鍛え抜かれた精神力
恩は決して忘れない、約束は守るその人情深さ
完璧に見えても迷ったり葛藤する人間臭さ
作中でも皆がモンテ・クリスト伯に惹きつけられるが、読み手もまた然りなのだ
そうどれだけ非情な復讐鬼と化したかに見えたものの、やはりエドモン・ダンテスなのだ!
そして彼の心情の見せ方が実に上手い
エドモン・ダンテスとしての苦しみと絶望は徹底的に一人称で読み手に見せる
しかしモンテ・クリスト伯となり、ある程度復讐の目処が立つまでモンテ・クリスト伯側の心境や胸の内は我々には見えないのだ
そのため彼が今何を感じ、これからどうしていくのか全くわからないのだ!
だが終盤から少しずつ心の叫びが溢れ出す
何の迷いもなかった復讐劇に思わぬことが起こり、心が乱れ出す
溜まり溜まった彼の心の圧が噴き出る様は素晴らしく心が揺さぶられた
そして最後は哲学だ
「とにかく復讐して幕が降りる…」という作品ではない
モンテ・クリスト伯の葛藤や神への問いかけ
全ての復讐が終わった後、彼が何を思い、どう感じ、どう始末をつけ、どう行動するのか
きちんと責任持ってデュマが描き切る  
そこに読者が満足するのではなかろうか

アドベンチャーであり、ミステリーであり、サスペンスであり、ヒューマンであり、ラブロマンスまである、しかし哲学さえも感じる痛快で究極の復讐劇エンターテイメント
ちょっと褒めすぎだが、しっかり楽しめ大満足であった

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年2月21日
読了日 : 2022年2月18日
本棚登録日 : 2022年2月18日

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