葬送 第一部(上) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2005年7月28日発売)
3.75
  • (36)
  • (41)
  • (59)
  • (5)
  • (1)
本棚登録 : 783
感想 : 64
4

幼少期からクラッシックピアノを習っていた
10年は習ったのだろうか…
世の中のクラッシックファンの前では口が裂けても言えないのだが、とうとう一度もクラッシックピアノを好きにならずに大人になってしまった
好きでもないことを練習するのは子供心に相当苦痛であったため、余計に屈折した拒絶反応を身に着けてしまった気がする
しかしながら、唯一ショパンだけは違った
ショパンだけはなぜか好きだった
理由は今でもわからないし、ショパンのことは何も知らない…(恥)
先日読んだ「また、桜の国で」の作中での「革命のエチュード」を久しぶりに聴いたこともあり、本書を読みたくなった

物語の舞台は19世紀中盤のパリ
1846年11月から天才音楽家ショパンの死まで、2月革命前後の約3年間に焦点が当てられる

ショパン、ドラクロワを中心とした芸術家たちの心の葛藤や孤独、彼らを取り巻く人間関係をその時代の流れと同じようにじっくり描かれている
ファスト文化に慣れ親しんだ最近の我々には、もどかしさを覚え、こういったじっくり読みものを通読できない人も多い気がする(もちろんブクロガーさん達のことではないですよ!)
しかしこの時間のゆったりと進む時の流れを面倒くさがらず向き合い、とことんこの時代のパリ、そしてたくさんの登場人物達の元へタイムスリップする…
そんな醍醐味が得られる作品だ

文体も時代を感じさせるよう工夫が凝らされ、まるで一昔前の翻訳した作品のようで良い味を出している
また心理描写の文章の長さや古典的な技法もあちこちに散りばめられ、深いこだわりを感じる

平野氏が3年以上の月日をかけて書かれたと聞く
この時代の出来事や知識を相当な時間をかけ、調べ抜き、労力を惜しまず完成させた感が随所に溢れている
フランス語の原文でフランス文学を読まれているだけのことはあり、一貫して全く日本人が描いた作品には思えない!
「マチネ…」しか読んだことがなかったためか、驚いた
重厚だとは聞いていたがこれほどまでとは…
その時代、その場所にすごい力で持っていかれる

というわけでここでは本書の本題にも入らない程度の紹介にとどめる
なんせ長いから慌てる必要もない(笑)

次回から本書の内容に触れていきたい

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年7月4日
読了日 : 2021年7月4日
本棚登録日 : 2021年7月4日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする