新装版 最後の将軍 徳川慶喜 (文春文庫) (文春文庫 し 1-65)

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  • 文藝春秋 (1997年7月10日発売)
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自分を歴史上の一人物に位置づけながら、驚くほどに客観的に事象を捉えることのできる稀有な人物。
家康や吉宗といった過去の有能な将軍との決定的な違いは、高い教養を持っていることであり、幼少期は読書が苦手だったエピソードはありつつも、本質は知的好奇心の塊で、安政の大獄期に恐るべき読者量を消化したエピソードも面白い。
クライマックスはやはり大政奉還になるが、これは、あとがき(向井敏)も面白い。
『龍馬がいく』では、坂本が大政奉還の知らせを聞いた時非常に感動したエピソードを引き合いに出し、慶喜からすれば、大政奉還は「逃げ道」であり、朝廷に放り投げるくらいの感覚であった。
静岡で隠遁生活を送る間、過去について語ること、過去の人物と会うことを極力さけたエピソードも、慶喜のストイックな一面を表している。
慶喜は朝敵になったが、明治政府の立役者の一人であった。
慶喜という天才が大好きになった。 

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年7月31日
読了日 : 2021年7月31日
本棚登録日 : 2021年7月31日

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