後味が悪いどころの話ではない。それなのに一気に読み進んでしまったのは、おそらく語り手であるデイヴィッドとシンクロし、早く結末に向かいたかったからかもしれない。ほのかな恋情、内から這い出てきた嗜虐、罪悪感、デイヴィッドのさまざまな心の動きと連動させる筆致はすばらしいの一言だが、そのせいで怒りをどこに向ければよいかわからなくなった。常軌を逸した行動をとる人物は複数いたが、彼らだけでなく、デイヴィッドへの苛立ちも胸にわくのだ。しかしそれはイコール、デイヴィッドとともに事件の結末までを見届けた自分にも刺さる憤りと後ろめたさである。自分の中に宿る闇をえぐりさらされたような心境になり、読後しばらく落ち着かなかった。
読書状況:読み終わった
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海外:その他
- 感想投稿日 : 2021年6月4日
- 読了日 : 2021年6月4日
- 本棚登録日 : 2021年4月15日
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