読み終えたとき、唐突になにかを「失った」と思った。
“静か”な装丁とともに、静寂のなかで進みゆく物語。
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“喜嶋先生の”とタイトルにあったため、主人公は喜嶋先生なのかなと思い、読み始めましたが、主人公は大学生の橋場だったので、少々おどろきました。
喜嶋先生の登場までには、思っていたよりもページ数がかかり、喜嶋先生が登場してからも先生の存在感はとても薄く感じました。
ただ、主人公である橋場が大学に入り、修士・博士課程と進むなかで、喜嶋先生と共通する“なにか”を得て、そして卒業し暮らしの中へと潜っていく過程で、“なにか”を失っていく様子は感じとれました。
喜嶋先生と橋場が共通して見ていた世界、それはタイトルの「喜嶋先生の静かな世界」であり、どこまでも潜っていける深い探究の森です。
けれど、ずっとその森を歩き続けるためには、暮らしと自分を切り離し、雑音がなにも聞こえない世界に生きる必要があります。
橋場と喜嶋先生の道がどう交わり、どう距離をとっていったのか。
橋場と喜嶋先生は、どういう道を歩んでいったのか。
1990年頃と思われる時代、まだスマホなんて微塵もなかったころの、とても淡々とした文章で語られる静かで、どこかせつない物語世界でした。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2021年1月22日
- 読了日 : 2021年1月16日
- 本棚登録日 : 2021年1月16日
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