雨のなまえ

著者 :
  • 光文社 (2013年10月18日発売)
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本棚登録 : 1182
感想 : 183
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帯の一文だけではあらわしきれない、5人それぞれに降る、ヒリヒリとした雨の物語。

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表題作含む、“雨”が登場する5本の短編集。

窪さんの小説には、結婚や出産を機に男女の関係をどちらかが無くしていったり、距離が離れていくお話が多いように思います。
今回のお話にも、そうしたものが含まれていました。

「雷放電」「ゆきひら」は、最初ラストの状況が理解できず、そこだけ読み直しました。その意味がわかるにつれて、ジワジワとした衝撃が走りました。

最後の短編「あたたかい雨の香水過程」は、うまく言い表せない違和感で夫との離婚を決意し、息子とともに生きていくことを決めた女性の話です。
しかしこの主人公が、どうしても好きになれませんでした。
丁寧な口調でありながら、人との間にきちっとした実線をひきながら生きる主人公。
白か黒かしかなく、息子に対して無意識の支配欲があり、自分の空間にそぐわないモノ(夫や息子の友だちと母親)を、切り捨てようとしていく姿、うけた恩をすぐお金やモノで返さなければと考えるその生き方に、ひどく息苦しさを覚えました。
けれどその反面、主人公のこうした部分はわたしにもあるなあ…と、キリッと胸が傷んだのも事実です。
そして、世の中にはわりきれない、かえしきれないほどの大きな愛をもっている人がいることも、教えてくれる物語でした。

最後に、ハード面についてです。
この本はソフトカバーの単行本なのですが、カバー部分が本体よりも少し大きい造りになっています。
そのため、結構めくりづらく、それが読みにくさにつながってしまっていた点は、とても残念でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 窪美澄
感想投稿日 : 2020年9月25日
読了日 : 2020年9月24日
本棚登録日 : 2020年9月23日

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