嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え

  • ダイヤモンド社 (2013年12月13日発売)
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“常識”の外側からそっとさしだされる、思いつきもしなかった考え方に、目から鱗!頭から湯気!
ちゃぶ台返しのごとく、“常識”をひっくり返してくれる本。

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アドラー心理学を理解する哲学者(哲人)と、自分に劣等感を抱いている青年との対話形式で書かれた1冊。

究極に読みやすい、けれど気を抜いて読むことはできない本…それがこの「嫌われる勇気」という本です。
むしろメモを取りながら、一文一文を噛みしめるようにして読むことがおもしろすぎて、文章でグサグサ胸を刺されながらも、それでも読むのをやめられませんでした。

1章ごとの内容の濃さは半端なく、メモをとりつつ読みきるまでに、丸3日かかっていました。
そしてこの本を読み終わったときは頭がパンパン、充実感・脱力感のオンパレードで、かんっぜん!にオーバーヒートでした。

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今までわたしは「自己肯定感を高めること」「誉める子育て」をしようと頑張ってきたのですが、この「嫌われる勇気」を読んだことで、その根底がガラガラと崩れました。

アドラーによれば、自己肯定とは「できもしないのに」わたしはできると自己暗示をかけることであり、本当に必要なのは「できない自分」をありのままに受け入れ、できるようになるべく前に進んでいくこと、つまり自己受容だというのです。
であれば、自己肯定感を高めようとしてきたわたしは、そしてわたしの子育ては、なんだったのでしょうか。

そして「ほめない、叱らない」という考え方にも衝撃を受けました。
叱らないはわかりますが、「ほめない」とも言うのですから、哲人の話を聞く青年のように、読みながら反発してしまいました。

しかしアドラーによると、「ほめる」というのは縦の関係であり、上の価値観によって下の行動を判断し認めることで、下を“操作”していくことだというのです。
そうして育てられてしまえば、下の者は上の価値観に合わせようとふるまうようになり、自分のやっていることの舵を他者に任せながら生きることになります。
それは、自分で判断する自由をなくすことでもあり、「自分には能力がない」という信念を作り上げてしまうというのですから、読んでいてゾッとしました。

よかれ、と思って子どもを誉めていたことが、アドラー心理学の目線で見てみると、まるっきり価値観が変わってしまうのですから、なんとも恐ろしい話です。
また精神科医・水島広子さんの著書、「対人関係療法でなおすシリーズ」や、「それでいい。」(細川貂々さんとの共著)の内容にかなり近いものを感じ、おそらく水島広子さんのベースには、アドラー心理学があるのではないかな?と感じました。

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もちろん、この本を読んで、アドラー心理学が絶対だ!としてしまうのも、言葉は悪いですが「正しくはない」のでしょう。

大切なのは、「この考えだけが絶対に正しい」と信じこむことではなく、いろんな視点にふれ、自分自身の考えを作り上げていくことです。
アドラーの考えである「なにがあったかではなく、どう解釈したかである」という言葉を借りれば、この本でアドラー心理学に触れて、自分がどう理解しどう解釈したのかが、いちばん大事なのです。

「この本の内容は、抽象的すぎて使えない!」と憤る人もいるでしょう。
でも、抽象的ということは逆に言えば、「だれでも自分に惹きつけて落としこめる」ということでもあります。
本当の良書とは、こう生きなさいという具体的な指示が書かれたマニュアル本のことではなく、自分で考えていくためのヒントとなる考え方を伝えてくれる本のことではないでしょうか。

アドラー心理学の考え方を実践するためには、“今の人生の半分の時間が必要”とも書かれていました。
それくらい実践の難しいアドラー心理学ではありますが、完ぺきに実践しよう!なんて気張らなくてもいいのです。
まず少しずつでも続けていけば、いつの間にかアドラーの教えは自分になじんでいるはず。
そんな自分になれることを楽しみに、本書で哲人が言っていた「まず、これは誰の課題なのか?を考える」「いま、ここ」から、はじめています。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 生きること、死ぬこと
感想投稿日 : 2020年9月19日
読了日 : 2020年9月16日
本棚登録日 : 2020年9月14日

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