本書で述べられた内容をカー自身に当てはめるなら、やはり二度の大戦という悲劇の経験こそが彼の主張を形成していったのだろう。つまり、歴史とは絶えざる進歩と理性の向上だろ思われていた20世紀以前の認識から、時代を経てもなお人間は過ちを続けるのだという反省と認識への転換が求められたのが彼の生きた時代であったのだ。「言葉を使うこと自体が彼に中立的であるということを禁じているのです」とは歴史学に関わらず重く響く言葉である。例え世界が絶えざる恣意的な解釈の集合体であっても、せめてそれを自覚することはできるのだから。
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カテゴリ:
評論/研究
- 感想投稿日 : 2013年8月25日
- 読了日 : 2013年8月25日
- 本棚登録日 : 2013年8月25日
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